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地域貢献、教育学と社会学からアプローチ 青山学院大学コミュニティ人間科学部

2020.04.15

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西島 博之
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少子高齢化、過疎化、産業の衰退。日本の地域社会は多くの課題を抱えている。青山学院大学が2019年、相模原キャンパス(神奈川県)に開設した新学部は、地域の現場で役立つ知恵を学び、コミュニティーの創造をリードする人材の育成をめざす。

コミュニティ人間科学部とは、地域社会の文化や歴史などの価値を知り、継承し、活性化するための専門家を育てていく学部だ。青山学院大はこれまで、広い視野を持ち、グローバルに活躍できる人材の育成に努めてきたが、なぜ「地域」なのか。コミュニティ人間科学部の鈴木眞理(まこと)学部長がこう話す。 

「青山学院のスクール・モットーは『地の塩、世の光』。世のため、人のために貢献できる人材を育成することが使命で、それはグローバルも地域も共通しています。本学部は地域貢献、社会貢献を強く意識した学部です」

地域貢献というと地域おこし、産業振興などの経済的なアプローチをとることが多い。だが、同学部は「地域をどう理解するか」が重要と考え、人間形成に関わる教育学と、地域社会を理解するための社会学を主な学問領域とする。学生は「子ども・若者活動支援」「女性活動支援」「コミュニティ活動支援」「コミュニティ資源継承」「コミュニティ創生計画」の五つのプログラム(科目群)から重点的に学ぶ領域を選択する。

「1年次から専門的な科目を学び、4年間を通して体系的に専門知識を習得できるようカリキュラムを工夫しています」(鈴木学部長)

鈴木眞理学部長
「相模原キャンパスは都会に近く、かつ地方のこともよくわかるという地の利がある」と話す鈴木眞理学部長(撮影/小黒冴夏)

無人島体験など全国約30カ所で実習

学生は1年次から「社会調査法」などを学び、地域社会を理解するための文献や資料の集め方、それを分析するスキルを身につける。そうしたスキルを生かして取り組む必修科目が「地域実習」だ。全国約30カ所の自治体、施設、企業、NPO法人などの協力を得て、その活動に学生が参画する。2年次には実習先の状況を事前学習。3年次は、学生8人のグループに教員1人がついて現地で学ぶ。愛媛県のNPO法人が開催する子どもたちの無人島体験、北海道の企業が運営する美術館活動などでの実習が予定されている。

「学生自身が体験をするのではなく、『主役』である子どもたちの活動を『支える人』になることを学びます」(鈴木学部長)

愛媛県での無人島体験では9泊10日の日程でNPO法人の活動や運営を学ぶ予定だ(写真提供/NPO法人えひめ子どもチャレンジ支援機構)
愛媛県での無人島体験では9泊10日の日程でNPO法人の活動や運営を学ぶ予定だ(写真提供/NPO法人えひめ子どもチャレンジ支援機構)

学生は目的意識を持って入学

「高校時代にコミュニティーに関する活動をしていたが、客観的、学問的な裏付けがほしかった」「地域実習に参加したい」など、目的意識を持って入学してくる学生も多いという。卒業後の進路としては、地方公務員、地域の金融機関、NPO法人、司書、学芸員などさまざまな道が想定されている。

同学部への注目度は高い。2020年度一般入試では、約102人の募集人数に対し志願者数は2122人と有数の倍率に。前年比でも5割以上増えた。「実習などで本学部と連携したいと、全国各地から引き合いも来ています」と鈴木学部長は話す。

1期生2人が肌で感じた新学部の学び

学生はどのような動機でコミュニティ人間科学部に進学するのか。学部1期生で現在2年生の備前響さんと山口凌さんに、同学部を志望した理由や1年間授業を受けた感想、卒業後の進路などを聞いた。

まず志望理由について備前さんはこう話す。

「高校生のとき、『育児×地域』をテーマに、女性が職場や育児で抱える問題について研究しました。地域で見守り体制をつくることが重要だと知り、女性の抱える問題を解決できるような人になるため、大学で専門的な知識を学びたいと考えました」

日本国内の地域に着目する同学部に魅力を感じたというのは山口さんだ。

「地元・東京都青梅市で自治会や子ども会、スポーツ協会の活動を通して成長したので、地元に愛着があります。ただ、青梅市も過疎化や高齢化といった問題を抱える地域の一つです。自分がそれらの問題を解決し、地域や社会に貢献できるようになりたいと思いました」

では、学部での学びはどうなのだろう。

「教員以外の仕事をされていた方や、主婦の経験のある方など、さまざまな背景を持つ教員の講義を受けられることがこの学部の良さだと思います」(備前さん)

山口さんは、「ものの見方が変わった」と話す。

「地域を調べる際、観光資源や特産品など有名なものだけでなく、歴史的な背景や暮らしやすさ、教育の特色など、地域を深くみることができるようになりました

学びを通じ、将来の目標も見えてきた。備前さんは卒業後、育児雑誌の編集の仕事をしたいと話す。将来は地元・長野県で、子育てをしながら働きたいと考えている。

「育児に携わる多くの人と関わることで培った問題解決能力や知識を、地元に還元したいと考えています」(備前さん)

山口さんは報道関係に進みたいという。

「地域の良さを多くの人に伝えて、地域の活性化につながればと考えています」(山口さん)

授業では少人数教育を徹底し、密度の濃い学習や研究をめざす(写真提供/青山学院大学)
授業では少人数教育を徹底し、密度の濃い学習や研究をめざす(写真提供/青山学院大学)

何をすべきか自分で考える

「地域実習」で実習先の一つになっているのが、竹林や小川などの自然環境のなかで子ども自身が「やってみたい」と思う遊びを実現していく冒険遊び場「ドリームプレイウッズ」(神奈川県綾瀬市)だ。運営するNPO法人ドリームプレイウッズによると、子どもが自然のなかで自由で豊かな体験をし、主体性や自己防衛本能、社会性を身につけていくことを基本方針としている。高校生から80代までの約50人が運営ボランティアとなり、子どもの見守りや遊具の修理、草むしりなどを行っている。

実習で、学生にどのようなことを学んでほしいのか。NPO法人理事長の澁谷敏夫さんはこう語る。

「子どもに『どのように遊べばいいのか』と聞かれても、我々は『自分で考えよう』と言うだけです。学生が実習に来た場合も同じで、『何をすべきかを自分で考えてください』と言います」

人が生きていくうえでは、論理的でなかったり、理不尽だったりすることに出合う。机上の学問だけでは解決できないことも多い。「子どもたちと一緒に遊ぶなかで、子どもたちのさまざまな側面を学び、子どもたちのために何ができるかを学んでほしい」と澁谷さんは期待する。

「学生には、NPO法人がどのような活動をしているのかも学んでほしい」(鈴木学部長)

鈴木眞理学部長(左)とNPO法人ドリームプレイウッズ理事長の澁谷敏夫さん(撮影/小黒冴夏)
鈴木眞理学部長(左)とNPO法人ドリームプレイウッズ理事長の澁谷敏夫さん(撮影/小黒冴夏)

大学メモ

明治初期、米国メソジスト監督教会の宣教師が創設した三つの学校が源流。青山(東京都渋谷区)と相模原(神奈川県相模原市)のキャンパスを持つ。学部学生数は1万8077人(2019年5月1日現在)。コミュニティ人間科学部(定員240人)は11番目の学部となる。

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