オンライン授業で学びを止めるな

立ち入り禁止でも授業は止めない 立教大経営学部の覚悟とは

2020.04.09

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中村 正史
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新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出され、都市圏の大学はキャンパス内への立ち入りを禁止したところが多い。授業開始も4月末か5月のゴールデンウィーク(GW)明けに延ばすところが大半だ。そんななか、「学生の学びを止めてはいけない」と、4月初めからテレビ会議ツールのZoomを使ったオンライン授業を展開しているのが、立教大学経営学部だ。学部長の山口和範教授に、その思いを聞いた。
(写真は、大学院経営学研究科で行われた双方向型オンライン授業の画面)

話を伺った人

山口和範さん

立教大学経営学部長

(やまぐち・かずのり)
経営学部経営学科教授、経営学部長、大学院経営学研究科委員長、教務部長や副総長を歴任。専門は、多変量解析、統計計算。データ分析のための統計解析手法の開発や評価を主な研究テーマとしている。また統計教育に関する研究も行っている。

9年前の震災時と同じではいけない

――新型コロナで各大学が授業開始を延期する中、4月4日から大学院でオンラインを使った授業を始めました。なぜですか。

2011年の東日本大震災の時も私は学部長でしたが、当時はさすがに学生を集められないだろうと授業開始をGW明けまで延ばしました。当時の吉岡知哉総長が「今こそ大学が問われている。大学が果たすべき役割を考え続けなければいけない」と言っていたのが今も頭に残っています。1カ月間、学生とつながりを切ってしまった。それでよかったのかと。ですから今回、9年前と同じことをしてはいけないと強く思いました。

教育の提供を止めることは大学の死を意味します。完全な形ではなくても、やらなければいけないと、3月半ばからオンライン授業を準備しました。うちは学生最優先の文化があり、教職員みんなが、学生の学びを止めないと言っています。

――オンライン授業は具体的にどのような形で行うのですか。

自動登録科目と呼んでいる、学生が必ず履修しなければいけない必修科目の大半とリーダーシップ入門、それにゼミ(演習)を、Zoomなどを使ってやろうとしています。

――4日の大学院の「リーダーシップ開発コース」のウェルカムプロジェクトの授業に、私も自宅からZoomで参加させてもらいました。画面には自宅から講義をする先生と、自宅などで受講している大学院生が映っていて、先生の講義の合間にグループに分かれてワークをしたり、画面が切り替わって大学院生が発言したり、チャットに次々と書き込まれたり、双方向の授業でした。

大教室の授業はオンラインでも問題がないかもしれませんが、双方向性が求められる場合は工夫が必要です。接続の問題もあります。うちは学生間のつながりが強く、今回も学生が自主的に集まってZoomのサポートチームを作ってくれました。首都圏の学生が多いのでWiFi環境のある学生が多いようですが、ない学生が出てきたら、そこできちんと対応します。学べる学生がいる時には授業を提供するというのがスタンスです。

自宅からZoomで大学院の双方向型オンライン授業に参加する記者。画面で講義しているのは中原淳教授。
自宅からZoomで大学院の双方向型オンライン授業に参加する記者。画面で講義しているのは中原淳教授。

対面授業よりインタラクティブな面も

――実際に始めるまで、さまざまな課題に直面したのではないですか。

準備はすごく大変でした。Zoomの使い方と登録の指導、4学年で1600人いる学生へのアナウンス、教員への研修……。しかし、学生の学びの環境を提供することが自分たちの役割ということは揺らぎませんでした。

今回実感したのは、大学設置基準に有事の時にオンライン授業ができるか、代替措置があるかを入れるべきだということです。日本の大学は発足当時から変わっていないことをすごく感じます。9年前の時のことを生かせていない。こういう時は悪あがきしなければいけないんです。

――人材開発・組織開発の第一人者として知られる中原淳教授が3月のゼミの春合宿を、学生が集まれないためにオンラインで行いました。これも参考になったのですか。

中原ゼミのオンライン春合宿は我々が知見を得るきっかけになりました。

――中原教授は「対面授業とオンライン授業は別物。オンライン授業は別の授業をつくることだ」と言っています。

対面授業は学生の反応を見られるのですが、どうしても目が行き届きにくくなる。オンラインだとチャット機能があるので学生の意見を拾うことができ、意外にインタラクティブになるんです。教室でクリッカーを使うこと以上に、学生の理解度もすぐわかります。

――オンライン授業の長所と限界をどう考えますか。

デメリットの一番は経験がないことです。教員の経験値が教育の質につながりますが、教員は教室の経験値はあってもオンラインの経験値がない。その経験値の蓄積が日本の大学の教育の質を上げていきます。

オンライン化によって社会人とか、日本中の地域とつながります。私は新しいチャレンジができると、その可能性を感じています。

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