休校延長の今こそ読みたい本

教育専門家・小川大介さん 楽しい読書で心に栄養を 自分の何かを変えてくれる本

2020.04.21

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葉山 梢
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世界的に新型コロナウイルスの感染が広がり、全国で休校措置を延長したり、授業日や授業時間を減らしたりといった動きが出ています。EduAで連載を執筆いただいている方や教育に関わる識者の皆さんに「休校延長の今こそ読んでほしいお薦めの本」を紹介してもらいました。

話を伺った人

小川大介さん

教育専門家

(おがわ・だいすけ) 京大卒業後、プロ個別指導塾SS-1を創設し、6000人を超える受験生の相談に乗ってきた。現在、幼児教育から企業人材育成まで幅広く活躍中。「親も子も幸せになれるはじめての中学受験」(CCCメディアハウス)など著書多数。

世の中全体が日に日に不安と焦りに包まれていくなか、友達とも会えずに家の中でじっと過ごすしかない今の状態は、子どもたちにとって大きなストレスであり、気持ちもなかなか盛り上がらないことと思います。そこから逃れるように、ゲームにのめり込む子、布団から出てこない子、ぼーっとして1日が終わっていく子の話も聞きます。

その気持ちもよく分かる一方で、自分で決められる時間がたっぷりある今だから、ゆったりと読書にふけって、心と頭に栄養を取り込んでほしいな、と考えました。選書の基準は第一に楽しいことです。そして読むことで、自分の何かが変わるきっかけになりそうなもの、ものごとの見え方が変わっていきそうなものを選ぶようにしました。

ご紹介した本の中に、お子さんの気持ちをつかむものが入っていればうれしく思います。この休校期間がお子さんにとって実りある時間となることを願っています。

楽しさの中に人間の本質をつくセリフ

『ブンとフン』 新潮文庫 井上ひさし(著)
対象:小学校高学年、中学生

ブンとフン
新潮社
価格:440円

数多くの名作を残した偉大な劇作家であり小説家でもある井上ひさしさんの、小説家としてのデビュー作です。これでもかというぐらいにナンセンスなユーモアがちりばめられていて、発表から50年経った今でもその魅力は全く色あせていません。

売れない小説家フン先生と、その作品の世界から飛び出てきた大泥棒ブンとが繰り広げるドタバタは、まさに目の前でコメディードラマを見ているようです。本を無心に読みふける楽しさに出会わせてくれるでしょう。それでいて人間の本質をつくセリフにハッとさせられもする名作です。

想像力が大いに刺激されて元気になりますよ。

海の魅力がつまった冒険物語

『コンチキ号漂流記』 偕成社 ハイエルダール(著)
対象:小学校高学年、中学生

コンチキ号漂流記
偕成社
価格:880円

子ども時代の私の心をつかんで離さなかった本です。ポリネシア人は南米大陸から海を渡ってやってきた、という自分の説を実証するために、ノルウェーの学者ハイエルダールが自ら「コンチキ号」といういかだに乗り、南米のペルーから南太平洋の島まで航海したときの貴重な記録です。日々起きることを淡々と記録しているのですが、満天の星、波間から聞こえる謎の声、サメの群れに囲まれて危機一髪の場面など、ワクワクする海の魅力がつまった冒険物語でもあります。

サメの尾を手づかみし、素早く逆さにして気絶させる捕獲シーンは、鮮烈な驚きとともに何十年経った今も私の脳裏に焼き付いています。

周囲からの反対や批判に負けることなく、自分の信念を貫いて見事にやり遂げていくハイエルダールの姿から、挑戦する勇気をもらえることでしょう。

また、この本を読むのに合わせて、国立科学博物館による「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」のことも調べてみてください。最初の日本列島人はどこからきたのか、海をどのように渡ってきたのか、を実際に当時の丸木舟を再現して、実行したプロジェクトです。親子で話題にすれば、自然とお子さんの将来の夢へと話が広がっていくのではないでしょうか。

算数・数学の面白さを伝える名著

『数の悪魔』 晶文社 ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー(著)
対象:小学校低学年、高学年、中学生

数の悪魔
晶文社
価格:1,760円

数の不思議な世界に引き込んで、算数・数学の面白さを伝えてくれる名著です。算数や数学が大嫌いなロバート少年の夢のなかに、ユーモアあふれる老人の「数の悪魔」が夜な夜なあらわれて、特別レッスンが始まります。最初は毛嫌いしていたロバートも、1と0の謎、ウサギのつがいの話、旅するセールスマンの問題など、謎解きをしているような気分でだんだんと数の世界の面白さに目覚めていきます。扱われている内容としては、素数、フィボナッチ数列、乗数、ルートなど中学生以上で習う数学なのですが、物語の語り口の面白さと絶妙な挿絵によって、小学生から十分に楽しめる作品です。読み聞かせをしてあげれば、小学校低学年でも数の不思議を楽しめるでしょう。

この本に出会えた子は、算数や数学は公式を覚えるもの、解法を覚えるもの、といった間違った学習にも染まらずに済むと思います。ラクラク読み終えて、数学の面白さをさらに味わいたい中学生、高校生には『オイラーの贈物』(吉田武著)もお薦めです。

不安が募る今こそ親子で読んで

『マネーという名の犬』 飛鳥新社 ボード・シェーファー(著)
対象:小学校高学年、中学生、高校生以上

マネーという名の犬
飛鳥新社

専門家からのお薦め本という企画で、お金に関する本を紹介するのは珍しいかもしれません。しかし全世界の活動が、新型コロナウイルス感染症によって大幅に停滞し、人々の生活も経済活動も全てが激変している今だからこそ、子どもたちに読んでほしい本です。かつ、親御さんにも一緒に読んでほしい本です。

資本主義の世界で生きていくには、どんな人も一定のお金が必要です。そのお金とはどのようにして得られるものなのか、どのように使っていくことが幸せな人生を築くのか、また資産を形成していくために何が大切なのか、を少女キーラと人間の言葉が分かる不思議な犬「マネー」の物語を通して学ぶことができます。

夢を持つことや目標を立てることの大切さ、自分自身の個性を見つめて自分ができることに自信を持ち、人が抱える問題を解決していくことで報酬は得られること、「幸運」とは準備と努力の結果であること、お金は人間を映し出す「鏡」であることなど、この本から得られる学びは、子どもたちがこれからの世の中を自分の力で生きていくためにどれも必要なことばかりです。

お金について考えることは、自分の生き方を選んでいくことにつながります。世界がどう変わっていくのか不安が募る今こそ、この本を親子で読み、親子で話し合ってほしいと思います。

気楽に眺めて物知りに

『頭がよくなる 謎解き 国語ドリル』 かんき出版 小川大介(著)
対象:小学校低学年、高学年

頭がよくなる 謎解き 国語ドリル
かんき出版
価格:1,430円

私は長年、中学受験国語の指導に携わってきましたが、数多くのお子さんの学びに触れれば触れるほど、国語力とはつまるところ語彙(ごい)力だと確信しています。

言葉をたくさん知っているということは、それだけ多くの事柄に対して関心を持っているということです。言葉で表すことができて初めて「知っている」と言うことができ、知っている世界が広がるほどにその外にある「まだ知らない世界」が見えてきます。

家の中でずっと過ごしていると生活リズムも単調になり、目にするもの、聞こえるものも変化が乏しく、好奇心が発揮される機会は細りがちです。このような時には、言葉の感覚を磨き、知識を増やしていくことで、日常生活の中に新たな発見のアンテナを立てていくことが大切です。

この謎解きドリルは、中学受験で必要な知識にとどまらず、漢字のあれこれや生活、文化、人の気持ちなどについてのマニアックな知識ももりこんだ、一種のクイズ本です。頭の体操要素も加えた言葉の知識問題に取り組み、ページをめくるとすぐ解答と解説です。解説は、雑学もまじえてできるだけ知識が広がるように工夫していますから、「へえ、そうなんだ」と気楽に眺めながら、物知りになっていっていただきたいと思います。

パート5の「気持ちの言葉」の章は物語の心情問題が苦手なお子さんにおすすめですよ。

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