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京都精華大学マンガ学部 技術磨き歴史と文化学ぶ 理念は「世界を変える」

2020.04.28

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原子 禅
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日本唯一のマンガ学部を設置する京都精華大。近年、マンガを「文化」として研究する大学が増えているが、制作技術とマンガ文化の両方を学べるのが同学部の特徴だ。IT社会の成熟により、卒業生は多方面での活躍が期待される。(撮影/朝日新聞出版写真部・片山菜緒子)

京都精華大に国内唯一となるマンガ学部が開設されたのは2006年のこと。しかし、同大の「マンガを学ぶ」歴史は、前身となる京都精華短期大学にマンガクラスが設置された1973年までさかのぼる。

「設置当初は社会風刺マンガなどのカートゥーンが中心でした。その後、時代の変化に合わせて、ストーリーマンガ、アニメーション、キャラクターデザインなど、学びの幅は広がっていきましたが、芸術と学問の両方を学ぶというテーマは不変です」

副学長でもある吉村和真教授はこう話す。学生たちは、描く技術を磨きつつ、マンガの歴史や文化論などを学ぶ。マンガ家の竹宮惠子氏は2000年から同大の教授として学生たちを指導し、その後、学長も務めた。現在も第一線で活躍するプロが教員を務める。

作品が与える社会への影響も含めて、学生たちには学問として、新たな視点でマンガと向き合ってもらう。この経験は作品を制作するうえで役立つものとなるでしょう。作画技術とマンガ研究の知識を併せ持つ人材を育成するのがこの学部の特徴といえます」

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「マンガの国際化は急速に進んでいます」と話す吉村和真教授

時代に対応した学びを提供

2010年代初頭まではマンガ家や編集者など、いわゆるマンガ業界を目指す学生が多かったが、吉村教授によると、その流れが変わってきているという。

今はキャラクターデザインの人気が高いです。マンガ家になるのはハードルが高いですが、『ゆるキャラ』をはじめ、キャラクターを使った制作物は日常にあふれていますよね」

キャラクターデザインは、ゲーム業界や一般企業などでも需要があるため、就職の幅も広がっている。

マンガ学部マンガ学科キャラクターデザインコース4年の鴨川諒一さんは、中学の頃から「絵を描く仕事に就きたい」と考えていた

「美大への進学も視野に入れていたのですが、この学部のオープンキャンパスに参加して、入学を決めました」

作画技術に加え、「絵を生かす方法」を学べることが魅力だったという。

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マンガ学部マンガ学科キャラクターデザインコース4年の鴨川諒一さん。「休日も一日中イラストを描いていることが多い」という

「印象的だったのが、3年生のときに大型商業施設で開催した『学生探偵セイカ』というイベントです。これは、いわゆる脱出ゲームで、参加者がなぞなぞやクイズなどの謎を解いてゴールを目指すもの。イベントのメインとなる探偵などのキャラクターデザインをはじめ、企画・運営のすべてを学生のみで行い、参加者にも好評でした

「ライブペイント」と呼ばれる講義は、外部のイラストレーターを招いて行われる。

「ゲストの講師は学生アンケートをもとに選ばれた著名な方です。イラストを描く様子を実際に見ることができるため、参考になる発見がいくつもあり、刺激的な経験でした。入学して3年経ちましたが、自分自身、成長を実感しています」

卒業後は、デザイナーとしてゲーム関連の会社への就職を考えている。

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鴨川諒一さんの作品「大いなる堕天 ザリエル」。制作期間は1週間ほど(画像提供/鴨川さん)

グローバルな環境も特徴のひとつ

2017年にはマンガ学部マンガ学科に「新世代マンガコース」を新設した。これは、スマートフォンなどIT機器の普及に対応したカリキュラムになっている。

 「今はWeb上で作品をすぐに発表できる時代。ファンの数などで、評価もダイレクトにわかります。そこで大切なのは、セルフプロデュース能力です。デジタル媒体に対応したこのコースでは、そのノウハウが学べます」

吉村教授は新コース設置の理由をこのように説明する。学生の約3分の2を留学生が占めていることもこのコースの特徴だ。

「マンガ学部全体でも3〜4割が留学生です。中国、韓国が多いですが、米国、フランス、オーストラリアなど世界中から集まってきています。彼らにとって、日本はマンガの『本場』なんです。大学として意図したわけではないのですが、グローバル化が進み、日本人学生にも好影響を与えています」

吉村教授は、学生たちに「マンガ家の先を目指してもらいたい」とエールを送る。

「マンガは読者に求められなければ意味がない。つまりマンガとは、社会を反映し、時代を象徴するもので、日常と非現実をつなぐ力があります。学生たちには『マンガ家やデザイナーになれたから良し』ではなく、そこからいかに社会へ接続し、貢献するかを考えてもらいたい。本学の理念は『表現を通じて世界を変える』です。従来の枠にとらわれず、多方面での活躍を期待しています」

【大学メモ】

1968年に短期大学として設立し、79年に開学。2006年にマンガ学部、京都国際マンガミュージアムを設置。大学の学部学生数は2989人(2019年5月現在)。マンガ学部はマンガ学科(4コース)、アニメーション学科(1コース)の2学科で募集定員は312人。

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