学習と健康・成長

書道家・武田双雲さんと長男・智生さんに聞く「家族」 親子は親友、基盤は感謝

2020.04.30

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ゆきどっぐ
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NHK大河ドラマの題字を担い、個展を開催するなど精力的に活動する書道家の武田双雲さん。ユニークなキャラクターも人気で、2019年には素敵な父親に贈られる「第38回ベスト・ファーザー賞」を受賞しました。そんな双雲さんの長男・智生さんはアフリカの児童労働問題を支援する学生団体「チョコプロ」を中学1年生で立ち上げ、活躍しています。智生さんの活動から見る双雲さんの子育て論を伺いました。

話を伺った人

武田双雲さん

書道家

(たけだ・そううん)1975年熊本県生まれ。書家である母・武田双葉に3歳から師事。東京理科大学理工学部卒。NTT東日本に入社し約3年間勤務した後、書道家へ転身。2018年から現代アーティストSouun♡としても活動を始める。2020年3月に、神奈川県の湘南で主宰していた書道教室を閉室した。『「子どもといること」がもっと楽しくなる 怒らない子育て』(主婦と生活社)など、著書が多数。

話を伺った人

武田智生さん

中学生・チョコプロジェクト代表

(たけだ・ともき)湘南学園中学3年生。3人きょうだいの長男。2018年7月にアフリカの児童労働の子どもたちを支援する学生団体「チョコプロジェクト」を立ち上げた。

長男・智生さんの活動 実体験から語り合う家庭環境がきっかけ

――双雲さんの長男・智生さんはアフリカの児童労働問題解決を支援する学生団体「チョコプロジェクト」を中1で立ち上げました。誰かのために行動を起こす意欲は、幼い頃からあったのでしょうか?

双雲:智生の社会問題に対する興味は、小学6年生で生徒会長を担った時から垣間見えました。彼はいつも、「学校はどうあるべきか」を自宅で熱く語ってくれたんです。中学入学後も熱は冷めず、生徒会に入って年上の高校生と、夜中の3時くらいまでSNSを使って議論していました。

智生:「チョコプロ」は、中1の地理の授業で、児童労働問題について学習したことをきっかけに立ち上げました。僕の通う湘南学園は、1学年200人くらいいる学校で、「活動に興味がある人は来てね」と声を掛けたら、30人くらいが集まりました。活動では、児童労働をテーマにしたドキュメンタリー映画の上映会を文化祭で行ったり、フェアトレードのチョコレートを販売したり。横浜市にある捜真女学校とコラボした「SGチョコプロ」という団体を通してクラウドファンディングを行い、2020年2月には横浜市で「中高生×未来のためのSDGsマーケット」というイベントも開催しました。今後はさらに活動の視野を広げて、地球温暖化などについても考えていきたいです。

――その活動の原動力はどこから生まれてくるのですか?

智生:いろんな人に聞かれるのですが、全然答えが見つからなくて……。ただ、幼い頃からいろいろな話を家族から聞いて育ったので、興味を持ったものは、自分で調べ、探しに行くようになりましたね。

双雲:さまざまな人物や国について話を聞く機会は、幼い頃から多かったかもしれません。智生は僕のパフォーマンスや講演会、書道教室で話していることを聞いて育ちましたし、時には家族や仲間たちと一緒にアメリカを縦断し、文化や歴史について語り合うこともありました。そういう実体験を通して、環境問題に興味を持ったのかもしれません。

書道家・武田双雲さんと長男・智生さんに聞く 「感謝」を習慣づける家庭環境のつくり方01

保護者の役目は、子どもが自主的に考えて行動できるように育てること

――さまざまなことを話し合う家庭環境なんですね。家族間の関係性はどうですか?

双雲:僕は好奇心のままに行動するから、いわゆる「父親らしく」振る舞うことはあまりないですね。まるで気の合う親友と一緒に暮らしているみたいだなって思います。

智生:僕も親子というより、親友っていう認識の方が近いかもしれないな。

双雲:血が繋がっていても、価値観や性格、家庭内での役割は違うんですよね。だから家族はフラットな関係で、それぞれが主張をしています。例えば、僕と妻の性格は正反対。僕は感動したことを世界中のみんなに語りかけるメッセンジャータイプで、妻は保守的で身内を大事にするタイプです。そこで大事になるのは調和ですね。お互いを思いやり、みんなの立場を考えながら自分の主張も混ぜてバランスを取っていくこと。そのためには、我慢せず、言いたいことを言える環境作りが大切です。

――そういう環境作りのために、保護者は子どもにどう接するべきでしょうか?

双雲:親の役目って、子どもが自主的に考えて行動し、解決できる力を育てることだと思うんです。そういう力って、親の命令を聞いていただけでは、育ちませんよね。

僕は、いかにクリエーティブに楽しみながら問題と向き合い、人のせいにせずに楽しく生きるかが大切だと思います。そのためには、感動すること。物事だけでなく、子どもの行動にも感動するのです。例えば、智生は幼い頃から自分で調べるのが好きで、人の行動もよく観察するタイプ。僕は彼を情報収集能力の天才だって思っていて、いつも感動していますよ。

――「天才だ」と子どもを肯定して褒める育て方は、双雲さんご自身が育てられた環境にも由来しますよね。

双雲:確かに、同じように子どもたちに接しているかもしれませんね。僕は書道については厳しく育てられましたが、それ以外では怒られたこともなく、基本的に何をしても両親からは「天才たい」と褒められて育ちました。

智生:僕も父に怒られた記憶は一度もないです。「天才だ」って伝えてくるのも、心から思って言っているんだなって感じています。

書道家・武田双雲さんと長男・智生さんに聞く 「感謝」を習慣づける家庭環境のつくり方02

子どもを評価しジャッジせず、生きている瞬間を味わってほしい

――自分で考えて行動できる子どもを育てるためには、双雲さんのようにさまざまな知識に触れる環境を整える必要性があるのでしょうか。

双雲:その必要はないでしょう。僕は環境より、保護者の感情の方が大事だと思います。怒りながら生きている親よりも、幸せを感じている親の方がいいですよね。仕事って、家庭って、楽しいよって子どもに伝えることが大事かなと思います。

智生:ピリピリしている親のところには近づきたくないし、楽しい雰囲気じゃないと過ごしにくい。僕がいろいろなことを家族に話せるのも、過ごしやすい家庭環境があるからかなって思います。

双雲:もちろん人間だから不機嫌な時もあって、完璧な状況なんてないのは当然。だけど僕も妻も過ごしやすい環境を整えるために改善を繰り返していて、最近はちょっとうまくいくようになったなって感じます。大事なのは、相手に好奇心を持って、尊敬したり、感謝したりすること。家族の感じ方は変えられないから、自分の考え方を変えるんです。

――今、子育てに悩んでいる方々にアドバイスを送るとしたら、どんなことを伝えますか?

双雲:現代人って、将来のために今を頑張るみたいな風潮がありますよね。それってすごくもったいない。3年後に世界がどうなっているかなんて、誰にもわからないじゃないですか。子どもを評価したりジャッジしたりしないで、もっと今を味わってほしいなって思います。子どもと一緒にぐだぐだゲームをしている時間もいいんです。基本は楽しくて素晴らしいことばかりがあって、たまに怒るくらいがいい。

書道家・武田双雲さんと長男・智生さんに聞く 「感謝」を習慣づける家庭環境のつくり方03

智生:最近、親から子、子から親への感謝が少ないように感じるよね。友だちと話していると親への不満ばかり聞かされることも……。できれば、感謝の気持ちを忘れないでほしいな。例えば、親が毎日お弁当を作ってくれるとか、家のことをしてくれるとか。感謝を言葉で伝えるのが難しくても、まずは小さなことでいいから気づくことが大事です。

参考になるかもしれないのが、家族でやっていた「感謝ゲーム」。ご飯を食べる前に、材料を運んでくれた人、料理してくれた人など食事に関わる10の感謝を見つけて、「ありがとう」を言ってから食べるんです。すごく記憶に残っていますね。今振り返ると、目の前にある出来事の背景を考えるきっかけにもなったし、ありがとうって感謝する習慣がついたなって思います。

双雲:そのゲーム、やっていたね。「感謝」は、僕にとっての活動の基盤であり、作品のテーマ。「感謝」という言葉は、すべてを包み込むんですよ。感覚的ですが、ダントツで素晴らしい言葉だなって思っています。

子育てって想像を越える大変さじゃないですか。荒波の中を感謝とか楽しむ力を持って、プラスに考えるほうが生きやすいと思います。僕自身も8月からカリフォルニアに家族と移住する予定で書道教室を3月に閉室しましたが、ビザがどうなるかわからない状況になり、移住計画は頓挫しています。今後のことは人類全員がわからない状況ですよね。だけど、家族とのんびり話し合いつつ、毎日を楽しんでいきたいなって思っています。

(撮影:辰根東醐 編集:阿部綾奈/ノオト)

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