学習と健康・成長

「自ら学ぶ力」、どうすれば育てられる? 自己調整学習の専門家に聞く

2020.05.06

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野阪 拓海
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新学習指導要領で、育成すべき資質・能力の1つに挙げられている「学びに向かう力、人間性等」。変化の激しいこれからの時代では、生涯に渡って自律的に学ぶ力がますます重要になります。そんな「自ら学ぶ力」を解明する研究分野が「自己調整学習」です。今回は自己調整学習の専門家に、子どもの「自ら学ぶ力」の育て方を聞きました。

話を伺った人

伊藤崇達さん

九州大学大学院准教授

(いとう・たかみち) 九州大学大学院人間環境学研究院准教授。名古屋大学大学院教育学研究科教育心理学専攻博士課程後期課程退学後、神戸常盤短期大学専任講師、愛知教育大学准教授、京都教育大学教育学部准教授を経て、現職。編著書に「やる気を育む心理学」(北樹出版)、分担執筆に「学ぶ意欲を育てる人間関係づくり」(金子書房)、「発達・学習の心理学」(学文社)、「自ら学び考える子どもを育てる教育の方法と技術」(北大路書房)などがある。

「自ら学ぶ力」を構成する3つの要素

――そもそも自己調整学習とは、どのような概念なのでしょうか?

定義づけには歴史的な変遷はありますが、整理すると「動機づけ・学習方略・メタ認知の3要素において、自らの学習過程に能動的に関与して進められる学習」と表現できます。

「動機づけ」とは、学習を進めるにあたってのエネルギーとなる心の働きを指します。具体的には、「自分はできる」という自己効力感や「算数の成績を上げたい」という意欲などを指します。

次に、「学習方略」とは、効果的な学習をするための方法や工夫のこと。例えば、単にドリルを繰り返したり、丸暗記したりするよりも、絵や図など視覚情報を使ったり、似たような漢字をカテゴリー分けしたりした方が、深い学びを得やすくなります。

最後に、「メタ認知」とは、自分自身を高い視点から見つめ直し、自らの思考や認知を適切にコントロールする働きのこと。「自分は何を理解していて、何が苦手なのか」を、正確に捉え、学ぶべき箇所を明確にする力と言っていいでしょう。

――それぞれの要素は学習において、どのように働くのでしょうか?

自己調整学習では、「予見(見通し)」「遂行コントロール(学び深める)」「自己省察(振り返り)」の3つのステップが循環的に行われます。そして、それぞれのステップに、動機づけ・学習方略・メタ認知が関係します。

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