9月入学は是か非か

昭和女子大学附属昭和中高校長・真下峯子さん「今やるべきは生徒の不安を取り除くこと」

2020.05.09

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中村 正史
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多くの学校で休校期間が2カ月に及ぼうとしている。緊急事態宣言の解除の先延ばしで、休校は一体いつまで続くのか。先が見通せないなか、「9月入学」を求める声が現役高校生らから噴き出し、その是非をめぐり賛否両論が白熱している。埼玉県立高校での勤務経験も長い真下峯子・昭和女子大学附属昭和中学・高校校長に、学校現場で起きていることを踏まえて、考えを聞いた。(写真は、朝のホームルームをZoomで行う同校の教員)

【話を伺った人】真下峯子氏カオ

話を伺った人

真下峯子さん

昭和女子大学附属昭和中学・高校校長

(ましも・みねこ)奈良女子大学理学部卒業。埼玉県立高校で理科・生物教育に取り組み、男子校での勤務も経験。県立松山女子高校校長を経て、大妻嵐山中学・高校校長、2020年度から現職。特に女性の社会活躍の場を広げることを目指して、女子生徒の理系進路選択、プログラミング教育推進などを含めたSTEAM教育に取り組んでいる。

9月入学はいま議論すべきでない

――今回の9月入学論は、休校になって学びの機会を失った大阪などの高校生たちが署名活動を始めたのがきっかけでしたが、この間、どんなことを考えていましたか。

高校生が言い始めた時は、そういう考えもあるかなと思いました。高校生にとって一番の心配は、このまま大学入試を迎えたら困るということ。ですから高校生はそう思ったのでしょうが、私たちは学校としてどうすべきかと、ずっと考えていました。

学校としてやるべきことは二つあります。対面授業ができなくても、どうにかして生徒の学習保障をすること、もう一つは登校が再開された時に起きる危険をどう回避するかということです。9月入学の議論は以前からいろんな経緯がありましたが、今回の推進派は国際化を目的にしているようです。しかし、9月入学は今の時期に議論すべきことではないと思います。今やらなければいけないことは、休校によって授業数が3分の2になった生徒の不安を取り除くことです。

9月入学制度は世界標準として検討すべきことです。できれば9月入学が実現すればいいと思いますが、今ではないでしょう。

――新型コロナウイルス感染が広がった時期、真下さんは3月まで大妻嵐山、4月から昭和女子に移りましたが、学校現場でどう対処してきたのですか。

大妻嵐山では2月に入って各種行事を中止し、卒業式は生徒だけの出席にしました。2月中旬に、感染が止まりそうにないためオンラインで授業をするしかないと判断し、若手教員にトライアルしてもらいました。大妻嵐山は生徒全員がiPadを持っていて、週1回、フィリピンとつないで英会話の勉強をしているので、生徒たちはオンライン授業の経験がありました。経験がないのは先生でしたが、2月末の職員会議で全員にZoomをインストールするよう指示し、3月に入ってオンラインでホームルームを行うようになり、生徒とオンラインでつながる環境が整いました。

校長が覚悟してやるしかない

――今の学校に移ってからは?

着任時にはオンラインで授業をすることは決まっていましたが、まだスタートしておらず、学校のシステムを整備する、授業に使うツールをそろえる、生徒の環境を整えるといった課題がありました。学校の学習支援システム(LMS)で使っていたソフトがうまく稼働しなくなったので、別のツールを用意し、どちらかがダメでも代替できるようにしました。4月3週目から朝のホームルームをZoomで行い、27日からオンライン授業を始めました。

最初の4日間は時間割り通りに1日6時間の授業をしたのですが、大変でした。生徒のモチベーションが続かない可能性があるので、ゴールデンウィーク明けから1日おきに変え、授業がない日は継続学習が必要な英語、数学、国語の学習、授業の予習・復習に充てています。

――中高のオンライン授業は私立間でも取り組みに格差があり、公立はほとんどできていません。真下さんは埼玉県立高校の勤務経験も長いですが、どう考えますか。

公立も生徒の学びの保障が重要です。オンライン授業ができなくても、やる方法を考えないといけません。紙ベースでやるとか、私が校長なら学校のホームページを使って試行錯誤します。コロナ対策の情報を共有し合う勉強会で、ある公立高校の校長が「校長が覚悟してやるしかない」と言っていましたが、同感です。

【文中写真】入学式
4月8日の入学式は、事前に真下校長、坂東眞理子理事長、中学と高校の生徒各1人をビデオ撮影し、新入生と在校生の家庭に配信した

高校生の一番の心配は大学入試

――今、生徒たちはどんなことを思っているのでしょうか。

高校生の一番の心配は、大学入試です。今の状態で受験できるのかという不安があります。高校3年生には「頑張るしかないよ」と言っています。しかし、たとえばAO入試(総合型選抜)は今までは1学期の成績で調査書を作ってきましたが、今の状況だとどういうエビデンスで、どの時点の達成度で作ればいいのかということになります。高校2年次までの成績に、今のオンライン授業や自学自習での頑張りを評価したものを加えて作るしかないわけです。

今は職員会議も教科会議も全部Zoomで行っていますが、今日も職員会議でこの問題を話し合います。

心配なのは、大学入学共通テストがこの状態でできるのかということです。休校によって授業時間が通常の3分の2しかない、年明け以降の受験を考えると3分の1しかないなかで、どうするのか。9月入学よりも、違うことに力を使ってください、と言いたいです。

――休校が解除されたとしても、再びコロナの感染が広がる恐れがありますね。

対面授業を再開できても、登校を再開できたとしても、分散登校、分散授業にしないといけないでしょう。一つのクラスを三つくらいに分けないといけないと思います。そのうちの一つは対面授業をして、残りの二つはZoomで授業をするとか、月曜日は中1と高1だけにするとか。

今、私の力になっているのは、全国の先生たちとのつながりです。課題や情報を共有し、失敗したことも聞きながら、日々、学んでいます。自分だけ、学校の中だけでやっていくのは難しい。情報の共有がコロナを乗り越えるために一番大切だと思います。

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