コロナでどうなる大学入試

“大学受験の生き字引”代ゼミ・坂口幸世さん「感情論からの入試制度変更に失敗の歴史」

2020.05.16

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中村 正史
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「9月入学は是か非か」をめぐる教育関係者の連続インタビューを通じて浮かび上がったのは、来年の大学入試をどうするかが喫緊の課題ということだ。大学入学共通テストは予定通りできるのか、入試時期をずらせるのか、出題範囲はどうするのか。大学入試に40年以上関わってきた受験界の大御所、代々木ゼミナールの坂口幸世さんに、過去の大学入試の出来事を振り返りながら、何ができるのかを聞いた。(写真は、1988年の大学入試で東京から新幹線で名古屋大に向かう受験生たち。前年から国公立大の入試がA・B両日程に分かれ、複数受験できるようになったが、合格者の入学辞退が相次ぐなど混乱した)

話を伺った人

坂口幸世さん

代々木ゼミナール教育総合研究所主幹研究員

(さかぐち・ゆきとし)1978年、代々木ゼミナールに入校。以来、40年にわたって大学入試情報に携わり、長く入試情報本部長を務めた。

入試日程をずらすのは難しい

――休校が長引いて来年の大学入試がどうなるかわからないという現状をどう見ていますか。

高校のカリキュラムが年度内に終わるのか。終わるにしても押せ押せで、入試の準備が間に合わない。そんな恐れがあります。入試自体はやろうと思えばできる。来年3月までに高校の教育課程を終えれば卒業できます。しかし、今の高3は準備不足のまま入試に臨まなければいけないので、どういうケアができるかということでしょう。

入試制度的には従来通りやっても問題はありません。高校教育課程が全部終わる前に入試を行うのかという意見があるかもしれませんが、これまでだってそうでしょ。全部が終わる前に大学入試センター試験(来年から大学入学共通テスト)があり、さらにその前にAO(総合型選抜)・推薦入試(学校推薦型選抜)がある。ですから、入試制度では表面上、問題ないのです。

9月入学論が出ていますが、今の高3だけ来年9月に入学させるとすると、解決しなければいけない問題が多すぎて、間に合わないでしょう。

――有識者や教育関係者の間では、共通テストの日程をずらす、あるいは今の高3に限って来年9月の入学も認め、共通テストを7月にも実施するという提案をする人もいます。

共通テストの日にちをずらすと、まず試験会場をどうするのかという問題が出てくる。1年延期になった東京五輪と同じ問題が生じます。私立大学の入試や、国公立大学の2次試験の日程をどうするのか、また大学の学事暦の見直しも必要になります。今の高3生が来年秋まで在籍するとなると、教室はどうするのか、教員はどうするのかという具体的な問題が出てきます。

今から入試を動かすのは不可能です。動かすなら2年前には知らせないといけない。思いつきの提案は無責任だと思います。

東大の秋入学構想がつぶれた過程を皆さん、忘れていませんか? 秋入学は社会との関わりが大きく、東大でさえ壁を崩せませんでした。同じことを全大学でやろうとすると、問題はさらに大きくなります。

――9月入学の枠を増やすのは、一つのやり方だと思いますが。

実は過去にそういうことをやった大学があります。1994年から東洋大学工学部が、2005年から早稲田大学商学部が実施しました。これは帰国生が対象ではなく、4月に入学できなかった人、つまり浪人生を半年後に入れようというものでした。両大学ともしばらく続けましたが、志願者が減っていき、やめてしまいました。浪人して半年後に入れるのだからいいではないかと思いますが、卒業も9月なので資格試験や就活の時期が合わない。4月と9月入学の併存はグローバル対応でなければ、うまくいきません。

共通テストの実施時期をずらすのも、2回行うのも難しいでしょう。というのも、共通テストはすでに問題作成に入っています。間に合うのであれば、何らかの対応を取るでしょうが、現実には難しい。

【文中写真】センター試験問題冊子
大学入試センター試験では、一般の問題冊子(右)に加え、文字を拡大した障害者向けの冊子なども用意された

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