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『シン・ニホン』著者の安宅和人さん「『マシン的な人』の価値は急減している」

2020.05.19

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中村 正史
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従来の暗記力を重視した学力観が見直される一方、データサイエンスやAI分野の教育の遅れが指摘されている。これから求められるのはどんな人材なのか。話題の『シン・ニホン』(ニューズピックス)の著者、安宅和人・慶應義塾大学環境情報学部教授に、日本の教育が目指すべき方向性を聞いた。(写真は、環境情報学部がある湘南藤沢キャンパス)

話を伺った人

安宅和人さん

慶應義塾大学環境情報学部教授

(あたか・かずと)マッキンゼーを経て2008年からヤフー、12年から同社CSO(チーフストラテジーオフィサー:現兼務)。16年から慶應義塾大学環境情報学部で教える。18年から現職。米イェール大学脳神経科学Ph.D.。データサイエンティスト協会理事。内閣府の数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度検討会議副座長など、政府会議の委員を多数務める。

今までは「マシン的な人」を育ててきた

――2月刊行の『シン・ニホン』は教育関係者の必読書と言われています。これまで日本の教育選抜過程で重視されてきた学習内容や能力は、刷新されるべきだと主張されていますね。

今まで日本は、大きな仕組みの中で巧妙に動く「マシン的な人」を集中的に育ててきました。言われたことをきっちりやる、余計なことは言わない、仕掛けない。したがって、これまでは暗記した項目を増やすことが、人より秀でるカギでした。しかし残念ながら、そのような業務を自動化できる人、それを構想できる人に価値が移り、マシン的な人の価値は急減しています。これらの業務に必要とされる能力の多くが、データ×AI化がもたらすキカイのほうが得意だからです。これまでとは真逆の脱マシン化をしなければなりません。

日本で典型的なのが、学校で行われている「気をつけ!」「起立!」「前ならえ!」という、旧陸軍の軍事教練で使われていた号令です。もっとひどいのが、天然パーマをストレートにさせるとか、赤毛を黒く染めさせるといったこと。社会に長期にわたるダメージを生む罪深いことをしています。

人と違うことが、これからの価値の源泉になることがわかっていないのです。いま社会で力を持っている人は、つまはじきにされてきた人とか、マシン的な人から見ると理解できない人。他人の作ったレールに乗り続け、自ら人生のハンドルを握らないのは、マシン的な人生を歩むことそのものです。

【文中写真1】横浜市立大
日本でもデータサイエンス学部設立が相次いだ。写真は、横浜市立大のオープンキャンパス=2019年8月

――人が群がるところに行くことは、コモディティ(凡庸化)への道を歩むことだとも主張されています。

コモディティというのは代替可能ということですから、当然、価値は低い。にもかかわらず、そこに行こうとする人が多い。みんなが目指すものを追いかけるのはやめたほうがいい。単に上手(うま)いということより、その人ならではの価値を生むことに集中すべきです。

「Old Game」から「New Game」に変わっているのです。世界で「Old Game」の企業は急激に淘汰(とうた)されています。日本には「New Game」がない。これだけの経済規模がありながら、世界で見れば、日本で企業価値のトップ30に入っている企業はありません。この現実を直視せよ、と言いたいです。現在の日本の多くの人は、人づくりも事業づくりも大敗したのに、この現実を直視していないのです。

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