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時事問題、問われる「どうしてか」 立憲主義問う出題も 私立中学社会科入試100校分析

2020.05.27

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山下 茂
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今春の全国100校の私立中学社会科入試問題の分析によると、主権者教育を意識した出題が目立ちました。時事問題のテーマ別では昨年実施された参院選が最も多かったほか、立憲主義など憲法を題材にした出題もありました。こうした社会科入試への対応や勉強法について、分析にあたった早川明夫・文教大学地域連携センター講師に聞きました。

話を伺った人

早川明夫さん

文教大学地域連携センター講師

(はやかわ・あきお)森上教育研究所講師。大学の付属中学・高等学校の教頭を経て、大学で社会科の教員養成にあたる。中学・高校・大学の入試問題作成の経験を生かして、出題者の立場から入試問題を研究。時事問題にも明るく『ジュニアエラ』(朝日新聞出版)の総監修者を務める。

「憲法とは何か」「尊重擁護の義務は誰に」問う

まず、渋谷教育学園渋谷(東京)の先生と生徒の対話文形式の問題文をみてみましょう。

社会分析・渋谷

先生が参院選に触れ、「選挙はこれからの日本の在り方に対する国民の意見を聞く重要な機会です。(中略)今からちゃんと政治に注目しておかないといけませんね」と生徒に語りかけています。これは、主権者教育の大切さを訴える学校からのメッセージと読み取ることが重要です。学校の教育方針や、教科を受け持つ先生方の考え方が反映されているとみるべきでしょう。受験するほうもこうしたメッセージを意識して勉強してほしいし、出題者もそれを期待しているはずです。新しい小学校6年生の教科書は、まず公民分野、次に歴史分野と習う順番が変わりました。中学校社会科の学習指導要領(解説)でも「主権者として、持続可能な社会づくりに向かう社会参画意識の涵養(かんよう)やよりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度の育成」を目標に掲げています。

鷗友学園女子(東京)の問題では、憲法99条を示して「憲法」とは何かについて、二つの条件をつけて説明するよう求めています。

社会分析・鷗友カエ

(答 以下の文中で説明)

憲法は単に国の最高法規というだけではありません。なぜ、憲法を尊重し擁護する義務に国民が入っていないのか。もともと法は国民の権利を定めたもので、国民が権力者に対し政治は憲法に基づいて行うよう命じたもの。憲法は、①国民の権利を保障するものであること、②権力者の行動に歯止めをかけるため、権力者に尊重し擁護する義務があること、などを書き込む必要があります。私も大学の憲法の授業で尋ねると、ほとんどの学生が「国民に憲法を守る義務がある」と答えます。受験生の保護者も同じです。これでは、そもそも憲法が何のためにあるのかが分かっていないことになる。こういう生徒が欲しい、こういう力を持った生徒に入ってほしい、ということを意識して問題がつくられていると思います。こういった立憲主義にかかわる問題が、2018年には7校、今年も4校で出題されています。

吉祥女子(東京)は2年連続で出題しています。今年はこのような条文の空欄補充問題でした。

社会分析・吉祥2020

(答 公務員)

昨年は「憲法に明記されている国民の義務として正しくないものを選べ」とし、「教育」「納税」「勤労」などの中から、正しくないものとして「憲法を尊重し擁護する義務」を選ばせました。

社会分析・吉祥2019

(答 ウ)

いずれも最近の改憲論議がきっかけでしょう。「権利には義務が伴う」という意見がありますが、そもそも憲法が何かを知らないと「その通り」だと思ってしまう。日本国憲法の三大原則も大事ですが、そうした本質的な理解が必要です。それを押さえてほしいという学校からのメッセージ。2年連続で出したのは、昨年の正答率が低かったのかもしれません。立憲主義が理解されていないことへの危惧があるのではないでしょうか。

2020私立中学社会科入試 出題された憲法の条文ランキング(100校)

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