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大手前大学国際看護学部 外国籍の人と向き合う実習 多様性理解し「へこたれない看護師」に

2020.05.27

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原子 禅
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2019年に新設された大手前大の国際看護学部。現在、看護学部・学科を擁するのは、283大学あるが、同学部は「看護」と「国際」を結びつけたのが特徴だ。国際化が進んだ近年、看護資格を持った「グローバル人材」の需要は高まっている。(撮影/片山菜緒子)

国際看護学部設立の際、大手前大が大切にしたのは「国際化への対応」「実践力のある看護師の養成」だった。その経緯を学部長の鈴井江三子教授は次のように話す。

「現在、多くの私立大では、4年間で看護師に加え、保健師や助産師の資格取得を目指します。それに伴う統合カリキュラムによる複数科目の相互乗り入れや実習期間の短縮により、新卒の看護師はあまり医療現場に慣れずに仕事に就くことになります」

新卒看護師の離職率はここ数年、7.5%前後と高い数字で推移している。同学部では「大学での実践的な実習の不足もその要因のひとつ」と考え、1年次から病院のほか、地域にあるNPO法人やデイケア施設などでの実習を通して、実践力のある看護師の養成を目指している。そのキーワードとなるのが「多様性の受容」と「国際化への対応」だ。

成長と自信につながる実習を

国際化が進んだいま、国内には、移民や国際結婚などで日本に住む定住外国人、観光や留学、ビジネスなどで訪れた訪日外国人など多様な背景を持った人がいる。特に京阪神地区は住民の外国人比率が高く、それに伴い、医療現場での外国人患者も多い。

医療英語を継続して学ぶほか、3年次には海外の病院や看護系大学での実習も予定しています。さらに、1年次には『国際看護学実習1』として、定住外国人の支援施設やグループホームなどで実習を行います

昨年入学した1期生は、7~8月にこの実習を行った。「実習の前後では、学生たちの雰囲気が変わりましたよ」と、鈴井教授はその成長に目を細める。

「定住外国人のなかには、日本語、英語ともに得意ではない方もいます。その方とどのようにコミュニケーションをとっていくのか。相手の背景を理解し、試行錯誤していく。その経験が成長と自信につながっていきます」

鈴井江三子教授
鈴井江三子教授はアフリカや欧米諸国などで母子の健康支援や子どもの人権を守る研究を行っている

学生たちには想定外の変化もあったという。

「相手を理解する過程で、自己を再確認する経験をした学生が多かったようです。多様な人と触れ合うなかで、『あるがままの自分でいいんだ』と感じたそうです。学生たち自身も外国籍、社会人経験者など、多様な背景を持っていますから」

看護と英語の「二刀流」を目指す

同学部2年の山田萌圭さんがこの学部を選んだのは、「看護」と「英語」の両方に興味があったからだという。

「どちらの道に進もうかと悩んでいたときにこの学部を見つけました。はじめは両方できるか不安でした。でも高校時代に生徒会長を務めたときも最初は不安でしたが、やってみるといい経験となり、自信にもつながった。今回もチャレンジしてみようと思い、この学部で『二刀流』を目指すことに決めました」 

山田さんの実習先は神戸市内のグループホームだった。

「そこは認知症の在日コリアン1世や中国、ベトナムの人たちの支援を行う施設で、母語しかわからない人もいました。私自身、外国籍の人としっかりと関わるのが初めてでしたので、最初は戸惑いもありました」

彼らがなぜ日本で暮らすようになったのかを理解しようと、本人やホーム関係者からの聞き取りのほか、自分で時代背景などを調べていった。

「そのときの社会情勢や家庭の事情など、人それぞれの人生がリアルに伝わってきました。また、言葉だけに頼らずコミュニケーションがとれたことも自信になりました

3年次の海外実習でさらに経験を積み、将来は外国人を受け入れている病院に勤務することを考えている。

山田萌圭さん
「海外での実習が楽しみです」と話す国際看護学部2年の山田萌圭さん(写真右、提供/大手前大学)

看護資格を持ったグローバル人材

卒業後の進路として期待されているのは病院勤務のほか、検疫官、刑務官、キャビンアテンダントなど幅広い。鈴井教授は学生たちにこのようにエールを送る。

看護資格を持ったグローバル人材の活躍する場所は広がっています。学生たちには多様性を理解し、努力を続ける『へこたれない看護師』を目指してもらいたいです」

大阪大手前キャンパスC棟内にある図書館
大阪大手前キャンパスC棟内にある図書館は開放的な雰囲気。専門書がそろう

【大学メモ】

1946年に大手前文化学院として設立し、66年に4年制の大手前女子大学、2000年から男女共学の大手前大学に。キャンパスは大阪市中央区、兵庫県西宮市など。大学の学部学生数は2985人(2020年5月現在)。国際看護学部は2019年に新設され、入学定員は80人。

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