連載・親子で「考える」を動かそう! 「私」を伝える編
“私”の「当たり前」を「当たり前」でない人に伝える
2020.05.26

キミってどんな人? 考えを聞かせて?――。中学入試問題は、それぞれの“私”に問いかけてきます。知識だけでなく、身の回りや“私自身”とつなげて考えなければなりません。あらかじめ準備できるような「正解」はありません。子どもたちの数だけ答えがあるはずです。親子でアタマとココロを使って、「考える」を動かしてみませんか?
(問題文の一部を変えている場合があります)
”私”を伝える編の8回目は麗澤中学校の算数の問題です。
麗澤中 2019年/算数
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日能研の解説
3分の1+4分の1の計算方法という、中学受験生であれば「当たり前」のように知っていることを、初めて学ぶ子どもに対して説明するという問題です。
普段、「当たり前」に行っている計算も、いざ「計算方法を説明しなさい」と問われると、何をどのように説明すればわかってもらえるのか……、と思う人も多いのではないでしょうか。
この問題からは二つのメッセージが読み取れます。
一つは、「一つひとつの意味について、本質まで踏み込んで考えてほしい」というメッセージです。
ただ操作の仕方を覚えてあてはめるのではなく、その操作の意味は何か、どのような仕組みがあるのかと、踏み込んで考えることの大切さを伝えています。「当たり前」を、その意味まで深く考えることはそれほど簡単なことではありません。「当たり前」なのですから。「当たり前」の奥にある本質を意識して学ぶことが大切だよ、という出題校の思いを感じます。
そして、もう一つは、「どのように表現すれば相手が理解できるのかを考えてほしい」というメッセージです。
中学受験生は、採点者であるその学校の先生へ向けて、自分の考え方を、答案用紙を通して表現していきます。しかし、この問題では「初めて分数の足し算をする子どもに対して説明してください」と問われています。出題者や採点者だけではなく、“初めて学ぶ子ども”に対する説明だからこそ、まず何から、どのように説明すればよいだろう、例を使うならどんな例をだして説明すればよいだろう――と、悩んだ受験生も多かったのではないでしょうか。
グローバル社会と言われて久しい現代では、多様な文化、価値観を持った人々とコミュニケーションをとる場面が多くあります。そのような場面で、円滑にコミュニケーションをとる際に必要な力の一つは「表現力」です。「初めて学ぶ子どもに対する説明」を問うたこの問題は、出題校である麗澤中が掲げる、世界で語れる「ことば」を持とう、という理念と結びついた問題であるといえます。