コロナでどうなる大学入試
東洋大入試部長の加藤建二さん「一般選抜は通常通りにはできない可能性が高い」
2020.05.28

新型コロナウイルスの影響で休校期間が長く続き、スポーツや文化活動の大会が軒並み中止になっている。大学入試はどうなるのか、そもそも試験ができるのかと不安視する声が、受験生や保護者の間で広がっている。東洋大学で20年以上、入試に携わってきた加藤建二理事・入試部長に、大学の受け止め方と態勢を聞いた。(写真は、東洋大白山キャンパス8号館=同大提供)
(かとう・けんじ)1987年、学校法人東洋大学入職。教務部、入試部、総務部などを経て、2013年から入試部長。14年から学校法人東洋大学理事。職員生活33年中21年が入試部勤務。13年から紙の大学案内を廃止、オールインターネット出願に移行し、入試情報サイト「TOYOWebStyle」を始める。
文科省の方針を待たずとも、できることがある
――学校の休校が長引いて、来年の入試がどうなるかわからないと、高校生や保護者が不安がっている現状をどう見ていますか。
全国一律には教育が行われていない状況は認識していますし、受験生、保護者、高校の先生方の不安が日々大きくなっていくのも感じています。
まず、一番に優先すべきは、さまざまな臆測が飛び交い、不安を感じている受験生に、ある程度確定した入試情報を一日も早く提供し、その不安を払拭することだと思います。ただ、大学側も手探りで対応しているのが現状なのです。
9月入学論が出ていますが、何も決まっていない以上は4月入学で準備するほかありません。入試日程や出題範囲などについて文部科学省のガイドラインが早めに出てくるといいのですが、それを待つまでもなく、大学側でいろいろなことを想定して動く必要があると思っています。
東洋大学は5月20日に高校の先生方向けに、2020年度の入試結果と2021年度の入試方針について情報発信をしましたが、その中で総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜(旧推薦入試)では、調査書や外部試験スコアの取り扱いについて再検討していることをお知らせしました。
――具体的にはどういうことを考えていますか。
調査書については、通常なら高校3年生の夏までの成績の提出を求めていますが、高校が提出できる範囲を例えば2年生までの成績で認めるとか、英語の外部試験スコアについても試験そのものが延期になっているので、柔軟に対応するとか、さまざまな角度から検討を重ねています。
他大学から「東洋大学さんはどうするのですか」と問い合わせも来ていますが、皆さん迷われている印象です。受験生に安心して勉学に励んでもらうためにも、大学側はなるべく早く、さまざまな状況を想定した具体的な対応を発表すべきだと思います。
――通常だと、各大学はどういうスケジュールで入試情報を出すのですか。
例年、文科省の大学入学者選抜実施要項が6月上旬に発表されます。各大学はそれを確認したうえで、6月中旬くらいから、ホームページや大学パンフレットで最新の情報を発表します。正式な入試要項は、従来のAO・推薦が7月くらい、一般入試は9月から10月くらいですが、入試日程はいつなのか、出願資格を満たすためにはどのくらいの成績が必要なのか、選抜方法は筆記試験なのかプレゼンテーションなのかといった情報は、遅くとも6月中には発表する必要があります。
総合型選抜などではWeb面接やオンラインプレゼンを検討
――他にどういうことを想定していますか。
受験生が試験当日、新型コロナウイルスに感染して試験を受けられないことも考えられます。こういう場合を想定し、あらかじめ再試験を設定する必要があります。本学には11年前に新型インフルエンザが流行した時の教訓があり、それ以降、常に予備の入試問題を用意し、別日程も設定しています。
このような状況下においては、選抜方法をどうするかということも重要な問題です。総合型選抜、学校推薦型選抜は対面での試験ができない可能性があります。例えばコロナの第2波が来て、秋に緊急事態宣言が出たような場合です。
非対面式の入試に関しては、本学ではすでに2017年度から複数の学部で「Web体験授業型入試」を導入しており、このWebでの面接やプレゼンテーションの知見を活用することを検討しています。この入試はWebで授業を視聴し、出された課題に対するレポートを出願時に提出、試験当日は大学または自宅からプレゼンテーションを行うというもの。昨年は大学から約1000キロ離れた北海道の離島の高校生がWebで受験して入学しています。
――高校側も情報が乏しく、対応に困っていると思います。
休校が長引いたことで進路指導ができていない高校が多いようです。高校側からは「何か情報があればください」とメールでご連絡をいただいています。例年であれば、5月末から6月にかけて各大学が高校の先生方向けに説明会を開きますが、今年は本学を含め開催の中止を余儀なくされています。
本学では、高校の進路指導部への情報提供もさまざまな事態を想定し、オンライン化・デジタル化を進め、2年前から、登録した高校に入試結果などを個別に知らせる「高校マイページ」を運用しています。また受験生に対してもWeb会議システムを使った個別相談「TOYOWebサポート」を17年から実施しています。今年は例年と比較して相談人数も多いようです。
また、今年のオープンキャンパスは7月までの中止を決めていますが、本学はこの5年間で受験生向けの授業動画「Web体験授業」を600本以上公開しています。キャンパス紹介やさまざまな動画コンテンツも用意してありますので、これらを活用して、オープンキャンパスに参加できなくても、大学の学びに触れることができる態勢を整えています。
