コロナでどうなる大学入試

広尾学園中高校長の南風原朝和さん「大学や入試センターの対応には限界、『思考力評価』が足かせに」

2020.05.29

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中村 正史
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新型コロナウイルスの影響で休校期間が長く続き、スポーツや文化活動の大会が軒並み中止になっている。大学入試はどうなるのか、そもそも試験ができるのかと不安視する声が、受験生や保護者の間で広がっている。東大で高大接続研究開発センター長などを務め、大学入試に詳しい南風原朝和・広尾学園中学・高校校長に、来年の大学入試に影響する要因などを聞いた。(写真は、休校期間中の世界史のオンライン授業=同校提供)

話を伺った人

南風原朝和さん

東京大学名誉教授、広尾学園中学校・高等学校校長

(はえばら・ともかず)沖縄県出身。東京大学教育学部卒、アイオワ大学大学院教育学研究科博士課程修了(Ph.D.)。東京大学大学院教育学研究科教授、教育学研究科長・教育学部長を経て、東大理事・副学長、高大接続研究開発センター長を務める。同センター長時代にシンポジウム「大学入学者選抜における英語試験のあり方をめぐって」を2回にわたり開催し、大学入学共通テストへの英語民間試験導入の問題点が社会的に注目されるきっかけになった。2019年から現職。

高校教育の遅れは学校間格差が大きい

――学校の休校が長引いて、来年の大学入試がどうなるかわからないと、高校生や保護者が不安がっている現状をどう見ていますか。

3月から5月にかけて通常の学校活動ができず、全体としての教育の遅延につながっています。ただ、大きいのは学校間の違いがあることです。4月から時間割通りにオンライン授業をして、中間試験の実施準備をしているところもあれば、高校によっては環境が整わず、たとえば課題を少しずつ出す程度というところもあるようです。地域による休校期間の違いや、学校のオンライン授業の実施程度によって、高校の教育活動に地域差、学校差が生じています。それを入試でどう配慮できるかということでしょう。

――公立の多くは対応が遅れており、私立でも取り組みには学校間格差があります。

過去には東日本大震災のような自然災害があり、学校の設備面でも人的な面でも甚大な影響を受けた地域がありました。それに比べると、今回は生徒も教員も健康上の問題はなく、指導する時間も学ぶ時間もある点が違います。またネット上にはさまざまな教育プログラムもありますので、学校が提供する教育活動の格差イコール、生徒の学びの格差では必ずしもないというのが今回の特徴です。しかし、それでも全体としての教育の遅延と、地域差・学校差の存在は否めません。

文部科学省はすでに対応を考え始めていると思いますが、昨年の英語民間試験や記述式問題の大学入学共通テストでの中止決定を受けて設置された「大学入試のあり方に関する検討会議」には関係団体がそろっているので、その会議で高校や大学の現状などをオープンに聞くのがいいのではないでしょうか。5年後の入試のことも大事ですが、今年の受験生をどうするかは喫緊の課題です。

高校生の声も大事ですが、教育活動の現状などを関係団体からのヒアリングでシステマティックに把握することが必要です。それを踏まえて入試時期などを考えるべきだと思います。

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