学習と健康・成長

「おうち性教育はじめます」フクチマミさんに聞く 自尊感情を育てる性教育は「必須の教養」

2020.06.04

author
有馬 ゆえ
Main Image

世界的に大きく後れを取っているといわれる日本の性教育。「おうち性教育はじめます」(KADOKAWA)は、それをアップデートすべく書かれたコミックエッセーです。著者であるマンガ家のフクチマミさんは、思春期の子を持つ一人の保護者。長年、性教育にかかわってきた教育家・村瀬幸浩さんとともに本書をまとめました。そのことで、親子のやりとりはどのように変化したのでしょうか。本書が企画されたきっかけや読者の反響、おうち性教育のメリットなども含め、フクチさんにお聞きしました。

話を伺った人

フクチ マミさん

マンガ家・イラストレーター

(ふくち・まみ)
「わかりにくいことを、わかりやすく」をモットーに、日常にひそむ実は難しいことについてのコミックエッセーを多数刊行。「おうち性教育はじめます」(村瀬幸浩との共著、KADOKAWA)、「マンガで読む 子育てのお金まるっとBOOK」(監修・大竹のり子、新潮社)、「マンガでおさらい 中学英語 英会話スタート編」(高橋基治との共著、KADOKAWA 中経出版)など。

性教育が大事だと思いながら、教えることができなかった理由

――「おうち性教育はじめます」は、主に3歳から10歳の子どもを持つ保護者に向けたコミックエッセーです。初めに、本書を企画した経緯について教えてください。

きっかけは、小学4年生になった長女の体に変化が現れはじめたことでした。性教育については以前から意識してきましたが、きちんと教えるべきときが来たと感じたのです。周囲の保護者とも、性教育の必要性を話すようになっていました。

一方で、日本の学校教育では、月経や射精、受精といった知識は教えてくれても、受精の仕組みや性交にまつわる教育はされないというニュースを目にしてもいました。本当に教えたいことは学校の教育要領の範囲外。では、家でと思っても、何をどう教えていいのかわからない……。そんな戸惑いを抱えながら、自分にできることを模索しはじめました。

――実際にはどんなことをされたのですか?

まず、助産師さんによる性教育講座を企画しました。性交の話題はPTA活動であっても扱えないため学校で実施するのは難しく、有志を集めて保護者向けに1回、親子向けに1回、講座を開催したんです。

ただ、それだけでは解決にならなかった。いざ家庭で子どもに伝えようとしても、体が固まり、口が開かなかったんです。「大切なことなのに教えられない自分はダメな親だ」と、自己嫌悪にも陥りました。

――解決の糸口は見つかりましたか?

実はそれこそが、共著者である村瀬幸浩先生の講演でした。自分がなぜ性について教えられないのかがわかり、視界がパッと開けたのです。

原因は、二つありました。一つは、自分が性教育をきちんと受けてこなかったため、知識が乏しいこと。二つめは、性をどこかで不潔視していて、「性はいけないことだから子どもに教えたくない」という心理が働いていたこと。

それなら学び始めよう、恥ずかしいという気持ちをほどいていこう、という気持ちになりました。この体験が、本書の企画のベースになっています。

――性への知識不足と性の不潔視は、きっと多くの保護者をつまずかせていますよね。

日本では「性=ポルノ」という思い込みが強いため、性について伝えることのハードルが高い気がします。事実、助産師さんの講座を開催する際も、「親がこんなことをしているとわかったら子どもに嫌われるんじゃないか」「子どもに刺激が強すぎないか」という声がありました。

本書の制作では、こうした思い込みを取り除き、保護者の認識をアップデートしていくことに心を砕きました。読者が抱いているであろう戸惑いや不安を無視せず、同じ目線で学んでいく構成にしています。

新着記事