コロナでどうなる大学入試

「来年の大学入試はスケジュールを遅らせて」高校の先生たちの訴え

2020.06.02

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山下 知子
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新型コロナウイルスの影響で休校期間が長く続き、スポーツや文化活動の大会が軒並み中止になっています。そんな中、大学入試はどうなるのか、そもそも試験ができるのかと不安視する声が、受験生や保護者の間で広がっています。現場で高校3年生に接している高校の先生たちはどう考えているのでしょうか? 2人の先生に聞きました。

「2月に共通テスト、5月入学」を提言

「大学入試のスケジュールをそのまま1カ月後ろ倒しにしたらどうか」

静岡県立浜松北高校教諭の駒形一路さんはそう話します。4月末、大学教員らが文部科学相宛てに要望書を出した際、駒形さんは現場の教員からの声として意見書を添えました。

来年の大学入試スケジュールについて萩生田光一文科相は4月17日の会見で、「私案」として総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)を遅らせたい考えを示しました。これまでの予定では総合型選抜は9月1日が出願開始日。5月29日付朝日新聞によると、文科省は2週間後ろ倒しにする方針を決めたといいます。

5月14日の文科省通知では、総合型選抜・学校推薦型選抜について、開催が難しい大会や検定試験などの結果を得られなくても受験者に不利益がないよう、配慮を要請しています。個別のオンライン面接や、大学の授業へのオンライン参加、実技動画の提出など、「多様な選抜方法の工夫」も求めています。ところが、実施時期への言及はありません。また、大学入試センターは、来年1月に予定されている大学入学共通テストについて、予定通り進める考えを示していると報じられています。

駒形さんは、総合型選抜などの動きと歩調を合わせ、一般選抜(旧一般入試)でも共通テストを2月半ば、国公立大の2次試験前期日程を3月末、合格発表を4月にずらし、休校期間中の授業時間を少しでも取り戻すのがいい、と提案します。「大学は入学時期を各自で決められるので5月に設定すればいい。問題になるのは、高校卒業後の身分が不安定になる4月のみ。ここさえクリアできれば、一番現実的です」

一般選抜の中身については、共通テストと各大学個別試験の配点比を改め、共通テストの比率を小さくすることや、共通テストの問題を一部選べるようにすることを求めます。学校再開時期によっては、とりわけ地理歴史や理科で教科書が終わらない可能性があると指摘。すべて履修済みの浪人生や、地域による休校期間の差といった公平性の観点から、必要だと言います。

駒形先生の意見書
4月下旬、文科省に出した駒形一路さんの意見書

緊急事態宣言が解かれ、多くの地域で学校が再開されつつあります。駒形さんは「とにかく一刻も早く来年度入試の概要を明らかにしてほしい」と言います。多くの高校では、7時間目を設けたり、土曜授業を行ったり、長期休みを短くしたりするなど、学習の遅れを取り戻す策を講じています。その中で、一つの「ゴール」とも言える入試時期が様々に取りざたされることに、現場の教員として歯がゆさを覚える、と言います。

意見を表明したことについて駒形さんはこう話します。「文科省からはなかなか見通しが示されない。目の前に生徒がいる現場が、手をこまねいているわけにはいかないんです」

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