学校再開でも焦らないで

校内での感染予防策、どこまでやれば? 過剰な対応には弊害も 医師2人に聞く

2020.06.05

author
上野 創
Main Image

学校の閉鎖で失われるもの

南医師は今後について、「地域の学校を一斉に閉じるとか、教育活動を大幅に制限するという対応は、このウイルスに関して適切とは思えません。徹底的にやらなくても予防はできるうえに、やればやるほど失われるものが大きくなってしまうからです」と語ります。家で過ごすことによる子ども自身のストレスのほか、保護者の負担が仕事への支障につながったり、家庭内のぶつかり合いや虐待を招いたり、「回り回っていろんなところに弊害が出てしまいかねない」と心配します。

日本小児科学会の予防接種・感染症対策委員会は5月、さまざまな論文をもとに、会員や医療関係者に対して「医学的知見の現状」を出しました(リンクはこちら)。

「患者で小児が占める割合は少なくほとんどは家庭内感染」「現時点では学校や保育所でのクラスター(集団感染)は極めて稀(まれ)」「ほとんどの小児症例は経過観察または対症療法で十分とされる」としたうえで、「教育・保育・療育・医療福祉施設等の閉鎖が子どもの心身を脅かしている」と警鐘を鳴らしています。

具体的には「学校閉鎖は教育の機会を奪うだけでなく、屋外活動や社会的交流が減少することも相まって子どもを抑うつ傾向に陥らせている」などと指摘しています。

6月に入り、北九州市の小学校でクラスターとみられる事例が公表されましたが、それまで小中学校でのクラスターはほぼありませんでした。また、子どもは無症状や軽症が多いと報じられています。

北九州市の小学校
相次ぐ感染確認を受けて給食と午後の授業の再開が見送られ、児童クラブを利用する子どもだけが残った北九州市立清水小学校の教室=2020年6月1日、藤脇正真撮影

医療機関と学校が連携を

「学校の先生たちは本当によくやっているなぁと思いました」と語るのは佐久総合病院佐久医療センター小児科の坂本昌彦医師。再開された健診で訪問した学校では、床にテープをはって、子どもたちが密着しすぎないようにするなど、さまざまな工夫をしていたと言います。

ただ、学校は対策について、他の学校と連絡を取り合うことはあっても医療の専門家に尋ねる機会が少ない点が気になるそうです。「あの学校もやっているのだからなどと横並びの意識が働くと、どうしても対策が過剰になりがち。学校同士だけでなく、医療者と連携できるように、医療側も問い合わせしやすい窓口を作ろうと動いています」と話しました。

また保護者に対しては、「子どものことを思えば不安が尽きないのは当然なのですが、感染リスクをゼロにすることはできないという前提で、どこまで対策や行動の制限をするのか考えましょう」と語ります。子どもへの対応は、大人が考えて従わせるケースがほとんど。「自分たちが心配だから、ということではなく、科学的な根拠があるのか見極めながら子どもにとっての最善を判断してほしい」

新着記事