学校再開でも焦らないで

コロナで不安な中高生へ 児童精神科医・井上祐紀さん「一人で抱え込まないで」

2020.06.16

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葉山 梢
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新型コロナウイルスの影響で、気持ちが落ち込んでいる中高生は少なくないのではないでしょうか。受験の見通しが立たずに不安だったり、大会やコンクールが中止になって目標を見失ったり……。学校関係者の相談に乗ることも多い児童精神科医・井上祐紀さんに、子ども自身や周りの大人にできることを聞きました。

もともとあった問題があぶり出された

――部活の大会やコンクールは軒並み中止となり、目標を失った中高生がたくさんいます。

東日本大震災の時もそうでしたが、コロナ禍が問題を引き起こしたというより、もともとあった問題があぶり出されているように見えます。たとえば家族の問題。コロナ以前から潜在していた問題が、みんなが家にいることで表に出てきやすくなっているのではないでしょうか。

部活についても、自分自身が日頃からどう思っているかがあぶり出されると思います。コロナ禍がなかったとしても部活はどこかで卒業するもの。目標の内容を変えていける人は大丈夫です。ただ「他にとりえがない」「勝たないと意味が無い」と思い詰めている人にとっては目標の変更は容易ではありません。自分自身がつらくなる考え方は持たないでほしい。「自分には何もない」と一人で抱えすぎず、誰かに助けを求めるべきです。

目標を失うこと自体、子どもたちにとって非常につらい体験には違いありません。しかし、その喪失感から徐々に立ち上がり、新たな目標を見出せる子どもたちもまた少なくないはずだと考えています。

――子どもが悩んでいるとき、保護者はどう接すればいいでしょうか。

自分が、困っている人の話を聞ける状態か、まず親自身が自問自答する必要があります。幾ばくかのゆとりがあるなら、「何でも言ってね」と対応を相手に預ける形の言葉をかけるといいでしょう。余裕がなければ無理せず、誰かを巻き込むことを考えてください。「親は万能説」は捨てた方がいい。親だって全てを投げ出したくなることはあります。

井上 祐紀さん

――5月に出た著書「10代から身につけたい ギリギリな自分を助ける方法」(KADOKAWA)では、友人、恋愛、家族などの悩みを解決するヒントを紹介していますね。

2~3月、コロナの影響で「ギリギリ」のつらい思いをしている子がいるだろうなと思いながら、また私自身も診療時の感染予防のために、ついたてや、受診の優先度を考えてもらうなどの初めての対応に追われて「ギリギリ」を感じながら、一気に書きました。様々な悩みを抱える10代の子たちが「自分を助ける方法を知る本」であって、「自分を変える本」ではありません。

自分が何に困っているのかということは、そもそもはっきりしないもの。まず「何が起きたか」、つらさのきっかけとなった出来事を思い出しましょう。次に、その出来事を「どう感じたのか」を振り返ると、「自分がどう変わってきたのか」が見えてきます。たとえば「コロナの影響で高校生活最後のコンクールが中止になった」という出来事があり、「目標がなくなり、今まで頑張ってきたことが無駄になった」と感じた。その結果「何をしても楽しくなくなった」といった具合です。そこまで整理して初めて「どう対処するか」が見えてくる。本では悩みの具体例を挙げて説明しています。

誰かに相談することは大事ですが、相談相手には注意が必要です。決めつけが多かったり秘密を守らなかったりする人は実に多い。相談相手を探すときは、最初から軽々しく秘密を話さないようにした方がいいです。身近で見つからない場合は専用の相談窓口などを利用して専門家に相談する方法もあります。

相談してうまくいかなくてもがっかりしないでください。人とつながる目的は、何があったのかを理解してもらい、共感してもらうこと。思いを口に出すことは、自分の気持ちを整理し、理解するのに役立ちます。

――いま「ギリギリ」の気持ちを抱えている中高生にメッセージをお願いします。

「当たり前」を疑おう。大人自身が焦っている今の時代に、大人が言っていることは疑った方がいい。他者が設定した基準に追いつけなくても焦らないで、自分に本当に必要なものは何か考えてみよう。自分を責める必要はありません。なぜならあなたは「守られるべき存在」なのだから。

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