どうなる中学・高校入試
都立高が入試の出題範囲を縮小 過去問対策、併願戦略はどうすれば?
2020.06.18

私立の出題範囲はどうなる?
「私立高入試がこれまで通りなら、結局、全て勉強しないといけないのでしょうか」。都立高入試の出題範囲が狭くなることについて、都内の区立中に通う3年の男子生徒はこんな不安を口にします。東京私立中学高校協会の近藤彰郎会長(八雲学園中学高校長)は「私立は今までも独自の入試を行ってきた。都教委の方針に準じることはなく、あくまでも学校ごとに決めることです」と言います。都教委も「方針は伝えるが、足並みをそろえるよう要請できる立場ではない」としています。
奈良県の私立高も同様の対応ですが、授業で学ばなかった単元は、私立高受験者の不安解消のため、県教委の指導主事が授業動画を作り、12月以降にオンラインで見られるようにするそうです。

長年、高校受験の指導に携わってきた予備校講師・受験コンサルタントの新野元基さんは「都道府県によって高校入試の制度はまったく違う」と前置きした上で、東京のケースについて次のように話します。
「東京の私立高の一部は『併願優遇』という仕組みを設けています。この仕組みを使えば、各私立高が提示する内申点などの基準をクリアすることで合格が見込めるため、筆記試験の対策は都立高校に焦点を絞り、範囲を限定して勉強すればいいでしょう」
過去問対策は中3秋までの模試を活用
新野さんによると、多くの進学塾では、英語であれば関係代名詞は6、7月、遅くても8月には学習します。そして、9月からは関係代名詞の入った長文をたくさん読み込んでいきます。数学の三平方の定理も9月までには習います。学校よりも進度が速いため、学力検査で私立高を受ける場合に備え、多くの塾は単元を減らさず、カリキュラム通りに教えるのではないかといいます。「そもそも塾としては教えてしまった方が早い。関係代名詞が分かっていた方が、過去問やテキストの読解問題もそのまま使えるからです」
都立高入試に焦点を当てた場合、過去の模試で勉強する際は「中3の秋までの模試を使うのがよい」とも。出題範囲外となった英語の関係代名詞は10月まで、数学の三平方の定理は12月まで、ほぼ扱われていないからです。新野さんは「どの問題が今年の出題範囲かを自分で見極めるのは難しいので、過去問を使う時は先生に相談しましょう。出題範囲外をやっても損することはありませんし、何より受験生のことを思っての決定なので、ポジティブに捉えてほしい。中3生はみんな同じ条件です」と助言します。
高校入試の出題範囲や日程は、これから発表するという自治体も多くあります。併願戦略には私立高の方針も大きく影響するので、中3生や保護者は今後の情報に注意していく必要がありそうです。