学習と健康・成長

母校・栄光学園新校舎を設計監修した隈研吾さん 21世紀の校舎は「小さくなる」

2020.06.26

author
ゆきどっぐ
Main Image

神奈川御三家の一つ・栄光学園。イエズス会の教えのもと、通学路の栄光坂や休み時間に行う中間体操など、11.1万㎡の緑豊かなキャンパスで体や五感を使って体験する学びを大切にしています。2017年に完成した校舎は世界的な建築家であるOBの隈研吾さんが設計監修。隈さんに自身の中学受験、そしてこれからの教育に必要となる建築について伺いました。

21世紀の校舎は「小さくなる」 体に気持ちいい建築

――栄光学園の新校舎のために、ほかのOBとともに設計チームを立ち上げ、設計監修として携わりました。校舎は3階から2階建てとなり、子どもたちの動線が外に向かっていきましたが、これは学校からの要望だったんですか?

いや、僕たちOBからの提案です。普通は必要な教室が増えて階を加えるのに、学校が要望する教室を入れながら、なんとか2階建てに収まっちゃったんです。学校も了承してくれました。

コンクリートの学校にはしばしばがっかりさせられてきたから、鉄筋コンクリートと木造のハイブリッド構造で2階部分は木造にしました。三浦半島の油壷に生徒が夏の数日間を過ごす「海の家」があって、そこで過ごす時間が夢のように楽しいんですよ。だけど、木と鉄骨で造られたバラックのような海の家が、ある日、コンクリートに建て替えられてしまったんです。まるで「勉強しろ」と閉じ込められる保養所みたいに感じて。だから、新校舎では日本の木造建築の良さを生かして柱を細くし、ひさしを長くして、海の家のようにリラックスできる空間にしたかったんです。

栄光学園校舎
栄光学園校舎(写真:隈研吾建築都市設計事務所提供)

――「みらいの学校」と名付けられたこの校舎。20世紀から21世紀に変わり、教育に関する建築も転換期を迎えるのでしょうか?

3階から2階建ての校舎になったように、これからの建造物は「小さくなる」現象が起きると思います。20世紀までは人口が増えたけど、今は人口が減っている。なのに、建物は大きくなっている。これは、大きな建物に入居すれば立派な企業に見られるという昔のフィクションにだまされている現象だと感じます。環境にもあまりよくないですしね。

僕たちはコロナ禍で、リモートワークできることに気が付きましたよね。僕の設計事務所も出勤していたのは僕だけでスタッフはリモートです。リモートワークできるなら、大きな建物はいらないでしょう。

教室に生徒を入れて効率的に教育するような校舎もいらなくなると思います。生徒数も減ってきているし、これからは普通の家で教育するように変わっていくんじゃないかな。現に、先進的な学校ではテレビや本棚、ソファが教室に置かれ、生徒はそれぞれ好きなところに座り、教師がときどき話しかけるだけというところもあります。

――なるほど。リラックスした空間で個別最適化した学びに変わっていくと。

僕がいま考えているのは、体に気持ちいい建築。教授として大学生と接することもあるんだけど、僕はよく「手を動かせ」と言います。どれだけパソコンや頭の中で格好いい絵が描けても、体を動かして模型を作るとわかることがたくさん出てきます。栄光学園は体が第一みたいな考え方があって「健全な精神は健全な肉体に宿る」と通じるものがありますね。

隈さま4

――最後に、次世代を担う子どもたちにメッセージをいただけますか?

偏差値を基準に人生を考える人が多いけど、最後は挫折に向かうのではないかと思います。

中学受験は自分の人生をどう送るか、子どもが最初に考える分岐点です。保護者の助言を素直に聞く子どももいるけど、お母さんの言うことだけを聞いてはいけない。親は社会を知っているように見えるけど、子育てについては世間をゆがんで見る人が多いと感じます。

――ご自身も両親から何か言われた経験はありますか?

父は、これからは高度成長期で技術が進む時代だから工学に進むべきだと考えていた。僕はしゃべりが下手で大人しかったから営業職には向かないと感じたようです。僕が建築に進むのを反対されなかったのは建築も工学だと父が思いこんでいたから。でも実際には、建築ってそれ以外の分野もすごく重要で工学とは言えないと思います。

僕は、勉強ができるよりも、人に対する理解があるかという文化的な能力こそが子どもにとって大切だと思う。自分の価値を自分で見いだせる子どもを育てていくべきだと思います。

(撮影:辰根東醐 編集:阿部綾奈/ノオト)

新着記事