慶應SFC30年、立命館APU20年――日本の大学をどう変えたか

慶應SFC編①◆授業名は「SFCスピリッツの創造」

2020.06.30

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中村 正史
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この30年の日本の大学に大きなインパクトを与えたのは、「大学改革のモデル」と言われた慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)と、学生・教員の半数が外国人という立命館アジア太平洋大学(APU)だろう。奇しくも今年、SFCは30年、APUは20年を迎える。両大学は日本の大学をどう変えたのか、そして現在も開設当初の理念は受け継がれているのか、連載で報告する。
最初は慶應SFC。AO入試、学生による授業評価、シラバス(講義要項)、24時間キャンパス、セメスター制……。今では多くの大学が導入しているこれらを初めて採り入れたのがSFCである。問題発見・解決型の授業、グループワークやディベートなど双方向型の授業もしかり。その現在とは――。(写真は、オンラインで行われている授業「SFCスピリッツの創造」=田中浩也・環境情報学部教授提供)

今も使われる「学生は未来からの留学生」の言葉 

慶應SFCが1990年に開設されて2、3年経った頃、私は「受験偏差値と大学神話に代わる新たな大学評価を求めて」をコンセプトにした『大学ランキング』の創刊準備に追われていた。SFCは当時、すでに「大学改革のモデル」として大学関係者の間で評価が上がっていたが、1994年に創刊した『大学ランキング』の指標の一つ、「大学学長による評価」で、そのすごさを目の当たりにした。

「教育面で評価する大学はどこですか」と全国の学長にアンケート調査したのだが、調査結果は「第1位 慶應義塾大学」「第3位 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス」。つまり、わざわざ「慶應SFC」と特定して回答した学長がたくさんいたのだ。1位と3位を合わせれば、慶應の圧勝である(ちなみに2位は立命館大学)。この調査は現在も続いているが、以後このような例はない。

あれから30年。久しぶりにSFCを取材して、まずちょっとした驚きだったのは、「学生は未来からの留学生」という初代の総合政策学部長、加藤寛氏(故人)の言葉が今も普通に使われていることだった。

2004年に開設15年の歩みを総括するために刊行された『未来を創る大学――慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)挑戦の軌跡』(慶應義塾大学出版会)に、「未来からの留学生」という言葉に関して次のような記述がある。

〈この眩(まぶ)しいばかりの意思表示に圧倒された他学部の一教授が、自虐を込めて「われわれ大学教師は所詮(しょせん)過去からの難民ですから」と巧みなレトリックで応じたエピソードは、開設当時、関係者の間で語り草になった。〉

他学部とは、経済学部や法学部など三田キャンパスにある既存の学部を指すのは言うまでもない。

SFC30年に合わせて2年間限定で、「SFCスピリッツの創造」という授業が、2019年度から20年度にかけて行われていることを学生の取材の中で知った。

担当するのは、環境情報学部の田中浩也教授。デジタルファブリケーション、3D設計などが専門で、学部も大学院も京都大学から東大大学院などを経て、2005年に環境情報学部の専任講師になって以来、SFCでデザイン工学を教えている。

授業名から想像すると、SFCスピリッツが薄くなっているということなのか。そもそも、SFC出身ではない教員がなぜこんな授業を?と尋ねたら、こんな答えが返ってきた。

【文中写真】キャンパスVR
新型コロナウイルス感染防止でキャンパスに入れないため、学生が交流の場として作った「バーチャルSFCキャンパス」

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