慶應SFC30年、立命館APU20年――日本の大学をどう変えたか
慶應SFC編③◆付属高校からの進学者倍増にどよめく
2020.07.06

この30年の日本の大学に大きなインパクトを与えたのは、「大学改革のモデル」と言われた慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)と、学生・教員の半数が外国人という立命館アジア太平洋大学(APU)だろう。奇しくも今年、SFCは30年、APUは20年を迎える。両大学は日本の大学をどう変えたのか、そして現在も開設当初の理念は受け継がれているのか、連載で報告する。
最初は慶應SFC。AO入試、学生による授業評価、シラバス(講義要項)、24時間キャンパス、セメスター制……。今では多くの大学が導入しているこれらを初めて採り入れたのがSFCである。問題発見・解決型の授業、グループワークやディベートなど双方向型の授業もしかり。その現在とは――。(写真は慶應義塾高校)
塾高も慶應女子も急増の異変
この春、慶應義塾関係者の間で話題に上る出来事があった。慶應義塾高校(男子校、通称「塾高」)、慶應義塾女子高校などからSFCの2学部に進学した生徒が急増したのだ。
慶應義塾では、付属校と言わずに「一貫教育校」と呼ぶ。高校は上記の2校のほかに、男子校の慶應志木、共学の慶應湘南藤沢、慶應ニューヨーク学院がある。中学は普通部、中等部、湘南藤沢、そして小学校は幼稚舎、横浜初等部がある。
各高校には、慶應義塾大学の学部の規模に応じた推薦枠があり、生徒の希望に応じて成績順に進学先の学部が決まる。慶應義塾高校の場合、生徒に第1希望から第5希望くらいまでを書かせ、第1希望から成績順に各学部の枠内で埋めていく。希望者が少なければ枠を満たせない。
この数年、ニューヨーク学院を除く四つの高校からSFCの2学部に進学するのは、合計で70人前後だったが、今年は154人が進学し、倍増した。
今年、慶應義塾高校からは総合政策学部に32人、環境情報学部に42人が進学した。昨年は2学部合わせて20人だから、3.7倍。2学部とも文学部を上回った。慶應女子高校は2学部で計17人。2017~18年は2年連続で4人だったから、SFC側は「慶應女子が4倍に増えた」と喜んだ。
慶應志木は2学部合わせて昨年の1人から12人に。慶應湘南藤沢は昨年の38人から51人に増え、2005年以来の50人台に乗った。
推薦枠が大きい経済学部や法学部などに比べると、まだまだ少ない数字ではあるが、変化の兆しを感じている関係者は多い。
各大学にはフラッグシップと言える看板学部があり、時代とともに変わっていくが、付属高校の生徒の志望度は、看板学部の一つの指標になる。例えば、立教大学の付属高校では、2006年にできた経営学部を志望する成績上位者が多く、いまや経営学部が看板学部になっている。慶應義塾では、かつては理財科以来の伝統を持つ経済学部が一貫教育校の一番人気だったが、法学部法律学科に替わり、近年は法学部政治学科に移っている。
〈バブルの発生、バブル崩壊、そして平時へ――。評価の変遷を一言で言ってしまえばこんなところだろう〉。『未来を創る大学――慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス挑戦の軌跡』(2004年)は、卒業生に対する世間の評価を当時、こう書いている。一貫教育校からのSFCへの進学者数も1990年代後半をピークに減少していた。