子どもの成長と教育費用

大学の進学費用は要注意 安易な「大丈夫」は親子関係にも影響

2020.07.06

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南澤 悠佳
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大学進学に向け、そろそろ終わりが見え始める子どもの教育費用。子どもの教育費用を準備するにあたって見直すべきポイントとは?

子育て世代のお金の悩みに、ファイナンシャルプランナーで2児の父でもある小山信康さんがお答えします。

小山 信康

話を伺った人

小山信康さん

ファイナンシャルプランナー

(こやま・のぶやす) IR専門印刷会社で、情報開示書類(有価証券報告書・招集通知等)の制作に携わる。その後、ファイナンシャルプランナーとして独立。 教育費の見直しからM&Aまで、家計や中小企業経営のサポートを行っている。 著書に「毎月1万円以上の家庭は必ずやりたい 保険の見直し」(彩図社)、「先生になろう!」(マイナビ出版)、「5000円から始めるつみたてNISA」(彩図社)、「5000円から始める確定拠出年金」(彩図社)。

教育費用だけじゃない……頭をよぎる老後資金とどう向き合う?

子どもが高校生になってくると、教育費用とともに、親自身の老後資金について考え始める人もいるのではないでしょうか。どちらもやみくもらに「ためなくては!」と考えるのではなく、あとどれくらい時間に余裕があるか、で考えます。

教育費用のピークは大学進学時なので、必要なタイミングは目前。教育費用について、子どもが小中学生だったときとは異なり児童手当は受けられないので、守りの姿勢をとり、共働きで収入を増やしながら堅実にためていくことが大事です。たとえば、私立大学では次のような費用がかかります。

私立大学 費用
※在学時合計は、文化系・理科系を4年間、医歯系を6年間在学したと仮定した場合の金額

文部科学省「平成30年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について」から

国立大学の入学料は28万2000円で、授業料は53万5800円が標準です。ただし、最近は授業料を値上げする国立大学もあり、東京工業大学と東京芸術大学は2019年4月の入学者から、千葉大学や一橋大学、東京医科歯科大学は2020年4月の入学者から授業料を引き上げました。値上げ後の授業料は、東工大を除く4大学で20%(10万7160円)増の64万2960円です。

一方、老後資金については、10年近くは余裕があるのではないでしょうか。こちらは時間があるのを利用して、投資に興味があればつみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)などを活用して、攻めの姿勢で準備することを考えましょう。

大学進学の費用、もし準備できていない場合はどうする?

子どもが高校生になったら、どこの大学に行きたいのか、そこで何を学びたいのかを親子で話し合うことが何よりも大切です。そんな当たり前なこと……と思うかもしれませんが、大学は学部によって入学料も授業料も異なりますから、どれくらいの費用がかかるかを把握することで、あといくら準備すればいいかの目安がわかります。

もしお金が足りない場合は、正直に子どもに伝えましょう。実際にあったトラブルとして、子どもが私立のある学部に行きたい意思をずっと親に伝えていて、親もそれを「大丈夫」と子どもに対してはもちろん、三者面談などでも話していました。ところが、「実は進学費用がない」ということを受験直前に子どもに伝えたことで、親子関係がこじれてしまった……というケースがありました。

これは極端な例かもしれませんが、お金が足りない場合は早いうちから伝えること。その際、親としてはその状況下でどうしたら進学できるのか、奨学金などの選択肢を調べておき、子どもにそれを伝え一緒に考えていきましょう。子どもも高校生であれば、そうした状況下で自分が何をすべきかを考えられるはずです。

大学進学で親が知っておきたいお金のポイント

では、親としてどういった制度を知っておくといいのか。ポイントは二つあります。一つは入学時のお金について、もう一つは入学後のお金についてです。

まず入学時のお金には、入学料と初年度の授業料があります。大学進学を助けてくれる制度で頭に浮かびやすいのは奨学金ですが、その支給は入学後のため、入学前に必要な費用に幅広く利用できるのは教育ローンです。進学希望の学部の費用を調べ、足りないようであれば教育ローンを考えましょう。教育ローンは大きく2種類あり、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」と銀行など民間金融機関の「民間の教育ローン」です。

また、意外と盲点なのが入学料の振り込みスケジュールです。子どもは受験日しか見ていないもの。たとえば、本命であるA大学の合格発表日が、滑り止めのB大学の入学料の振り込み期限を過ぎてしまうことがあります。納入期限のスケジュールを把握し、さらに子どもの志望校と優先順位を話し合い、場合によっては受験校を減らし、なるべく入学料の無駄が出ないようにすることも検討しましょう。それに、受験費用も1校あたり3万〜4万円はかかりますから。

そして、入学後のお金を助けてくれるのが奨学金です。入学後にかかる生活費や、1年生後期以降の学費が足りないようなら考えましょう。家計状況にもよりますが、成績が優秀であれば返済不要な給付型を受けられたり、授業料が免除になる特待生として入学できたりするので、高校時代のお子さんの頑張りが、教育費用の負担を減らすことにもつながります。

本人の自主性に任せ、教育費用はそのサポート

思春期の子どもと話し合うのは、お互い感情的になってケンカになってしまうなど、親としてもスムーズにいかない部分もあると思います。親として口にしてはいけないのが、「こんなにお金をかけているのに」といった一言。また、子ども自身に「塾に行ってあげている」と思わせてしまうのもよくありません。親としてできることは、子どもが希望する道に進めるようにサポートすることです。とはいえお金には限りがあります。教育費用はかければかけるほどいいというわけではありませんし、子ども自身にも目的をもって勉強をしてもらうことは欠かせません。

(編集:阿部 綾奈/ノオト)

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