慶應SFC30年、立命館APU20年――日本の大学をどう変えたか

慶應SFC編⑦◆教員たちが語るSFC論(2)鈴木寛教授「SFCは1番バッターなので、常に次を狙う」

2020.07.15

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中村 正史
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この30年の日本の大学に大きなインパクトを与えたのは、「大学改革のモデル」と言われた慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)と、学生・教員の半数が外国人という立命館アジア太平洋大学(APU)だろう。奇しくも今年、SFCは30年、APUは20年を迎える。両大学は日本の大学をどう変えたのか、そして現在も開設当初の理念は受け継がれているのか、連載で報告する。
最初は慶應SFC。AO入試、学生による授業評価、シラバス(講義要項)、24時間キャンパス、セメスター制……。今では多くの大学が導入しているこれらを初めて採り入れたのがSFCである。問題発見・解決型の授業、グループワークやディベートなど双方向型の授業もしかり。その現在とは――。(写真は、キャンパスの学生たち。今は構内に入れず、こういう風景は見られない=SFC提供)

AO・内部進学と一般入試の比率がカルチャーを変える 

鈴木寛・総合政策学部教授は、通産省を経て1999年から2年間、環境情報学部助教授の後、参議院議員を2期務め、民主党政権で文部科学副大臣、自民党政権で文部科学省参与と、文部科学大臣補佐官を4期にわたり務めてきた。2014年に総合政策学部教授と東京大学公共政策大学院教授に同時就任した。

「スズカン」の愛称は、初代の総合政策学部長を務めた加藤寛氏が名付けた。SFCに来た時の新任教員歓迎会で、加藤氏が「今日から鈴木君は『スズカン』と名乗ります」と宣言したのだそうだ。

今はSFC、東大大学院以外にも大阪大、福井大など複数の大学で教えている。多くの大学を知り、国の文部行政に長く関わってきた鈴木教授は、SFCをどう見ているのか。

【文中写真】鈴木寛教授
鈴木寛・総合政策学部教授 (撮影:キッチンミノル)

――SFCの学生は他大学と違いがありますか?

「違いますね。他大学は一般入試で入って来る学生が多いが、SFCは5割しかいない。この比率の違いは、マジョリティーのカルチャーを変えます。AO入試と一貫教育校からの内部進学生が半分いるのが、SFCのコミュニティーの特徴です。一般入試の小論文も知識・技能より、どういう人生を生きたいのか、社会への問題意識など、志を問うています。ここが決定的に違います。ですから何をしたいのかを持っている学生が圧倒的に多い」

――卒業生が書いたものを読むと、起業などで悩んだ時の相談によく乗っていますね。

「学生が迷いながら何かをつかんでいくプロセスを応援するのが大好きです。ゼミ生には『太鼓をたたきに来い』と言ってきました。一つ目の太鼓、第一歩は学生が自分で踏み出さなければいけない。『最初のバーを越えなさい。後は面倒を見てあげるから。でも、こっちから誘いには行かないよ』と言ってきました」

「SFC自体が『慶應義塾の目的』の原点に立ち返っています。三田よりも原点に近い。1990年に、もう一度、原点回帰しようとしたのがSFCで、その中でも私のゼミは最も原点回帰しています。『SFCは4番バッターじゃない。俺たちはいつも1番バッター、フロントランナーだ』と学生に言っています」

慶應義塾大学の教員たちがよく口にする「慶應義塾の目的」とは、創立者の福澤諭吉が門下生に志を託した一文である。そこには、慶應義塾の目的は、日本国中における気品の泉源、智徳の模範になることであり、「全社会の先導者たらんことを欲する」と書かれている。

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