『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革
「知るのは純粋に喜び」「失敗体験も経験値」 宇宙飛行士・山崎直子さん② コロナ時代を乗り切るヒント
2020.07.20

前回、宇宙飛行士の山崎直子さんに「失敗から学ぶことの大切さ」や「広い基礎力が自在な応用力のベースになる」といった学びのコツについて教わった。知見をフル活用して任務を遂行する宇宙飛行士の山崎さんにこそ、ぜひ聞いておきたいことがある。
子どものころにだれもが一度は口にしてしまう疑問に、「学校の勉強って、何の役に立つの? どうせ使わないんじゃない? そんなもの、なんでしなくちゃいけないの?」というものがある。これにどう答えたらいいか。
小学校での基礎学力がその後の学びを豊かにする
宇宙飛行士の場合、訓練などで学んだことがきっと実践に生かされると思うのだが、一般の人が学校でする勉強については、どう考えればいいだろう。
「そうですね、学んだことが何の役に立つのかは、はっきり示すのがなかなか難しいものですよね。訓練も、ほとんどが非常時の対応で、実際には使わずに済むことも多いです。ひとつ言えるのは、学びとは積み重ねていくものです。
基礎的な学びを修めておくと、その知識のおかげで次の段階の学びがよりやりやすくなる面はあります。
子どものうちから基礎の学びをしておけば、成長に応じて、また大人になってからでも、何かを学びたくなったときにたいへん学びやすくて、『よかった』と思うことがきっとあるでしょう」
「もうひとつ、知識を得ることは手段というだけじゃなく、それ自体が目的だということも言えます。
わからないことを知るのは、純粋におもしろいじゃないですか。その楽しさをできるだけ早いうちに体験しておいたほうが、学びの幅は広がっていくと思います」
山崎さん自身は、学びへの意欲が強い子どもだった?
「好奇心は小さいころから強かったかもしれません。
図鑑が大好きでしょっちゅう開いていましたし、どこかへ出かけていって、見たことのないもの、知らないものに触れることをいつも求めていました。
当時はそれらが勉強だとも考えていなかったけれど、広い意味で大事な学びの場だったのだなと思います。
勉強というと、どうしても学校の席に座って無理にやらされるイメージがありますけれど、それだけじゃないよ、好きなことを知ろうとする行為すべてが勉強であり学びだよということには、ぜひ気づいてほしいですね」
通訳の仕事や遺伝子工学に憧れたことも
長じて宇宙飛行士になった山崎さんは、小さいころから夢へ向かって一直線だったのだろうか?
「確かに小さいときから星を見るのが好きで、プラネタリウムに連れて行ってもらったり、天体望遠鏡をのぞかせてもらったりといったことはありました。
そういう体験が重なっていって、宇宙にかかわることをしたいなという思いが、だんだん大きくなっていった。
何らかの特別な体験や勉強をしていたというよりは、ふつうに手の届く範囲で宇宙のことに触れていただけですけれどね」
思い描いた宇宙への夢が、ブレたり見失われたりしたことはない?
「宇宙以外にもいろいろな方面に興味関心は向いていたので、進路は悩みましたよ。中学生のときに米国の女の子と文通する機会があって、海外で働くことや通訳の仕事に憧れたこともありました。
あとは、当時盛んになりつつあった遺伝子工学にも興味を持ちましたね。青いバラをつくるプロジェクトなんかが話題になっていたので。
それでも最終的には、子どものときから好きだった宇宙のことへと、気持ちが定まっていったんですよね」
夢の実現にむけて、いまできることをやり続けよう
進路を考えるうえで効果的だったのは、「夢の幅」を持つゆとりがあったことだ。どうしても宇宙飛行士になる!と考えるのではなく、宇宙にかかわって生きていきたいという目標設定にしたのがよかった。
「そう、宇宙への想いはずっと強くありましたが、宇宙飛行士になるだけが選択肢じゃないということもどこかで考えていました。宇宙飛行士は毎年募集があるわけでもなく、職業とするにはイレギュラーですしね。
まずはエンジニアとして宇宙に携わりたいとの目標があって、そのさらに上のねがいとして、宇宙に行ってみたいという気持ちがあるという感じ。
それに、宇宙飛行士になれたとしても、本当に宇宙に行けるのか、いつ行けるのかというのはまったくわからないんですよ。
どうにもならないことに思い悩むのはやめにして、自分ができることをあきらめずにやり続け、そうするうちにできることの幅を広げていくのがいいのだろうと思います。
子どものうちって、『どうせ自分にはできないし……』などと、ものごとをあきらめてしまうことがけっこうありますよね。確かに、できるかできないかはわからない。
でも人生は、やって後悔するより、やらずに後悔することのほうが圧倒的に多いじゃないですか。だったら、迷ったときにはやってみようかなと、私自身は心がけていますね」