連載・親子で「考える」を動かそう! 「私」を伝える編

“私”が“私”を育てる私学の中学入試問題

2020.07.29

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日能研
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キミってどんな人? 考えを聞かせて?――。中学入試問題は、それぞれの“私”に問いかけてきます。知識だけでなく、身の回りや“私自身”とつなげて考えなければなりません。あらかじめ準備できるような「正解」はありません。子どもたちの数だけ答えがあるはずです。親子でアタマとココロを使って、「考える」を動かしてみませんか?

(問題文の一部を変えている場合があります)

“私”を伝える編の10回目は不二聖心女子学院中の国語の問題です。

 不二聖心女子学院中 2019年/国語

問題
あなたが誰かのために何かをした経験について、三百字以内で作文を書きなさい。

日能研の解説

この問いは、ある物語を読んだ後に出される問題の最後の問いでした。物語のなかでは、お祖父(じい)さんのために、孫にあたる中学生の男の子が、書店にお祖父さんの本を置こうとします。この問いに取り組むにあたっては、この物語の内容を参考に、「誰かのために何かをした経験」にあたるものに着目します。

実際に入試で出された物語を読まずとも、「誰かのために何かをした経験」はあるでしょう。

試験時間の中で、子どもたちは「誰かのために何かをした経験」を記述していきます。

このとき、子ども自身の経験をやみくもに書けばよいわけではありません。「何かを(する)」ということが、「誰」のためなのか、そしてどういう点でその人のためになっているのかを考える必要があります。問いには、特段「文章を参考に」という文言はありませんが、文章読解問題の最後の問いであることを考えると、物語の中で展開している内容から、「誰かのために何かをした経験」を見つけだすことが必要です。言わば、物語の内容と自分が書こうとしている内容との共通点や相違点に目を向けて、問いで求められることを構築していくことが必要となります。

このように、問いの言葉から、考えられることを類推し、また比較して考えていくことで、子どもたちは客観的な視点を持つことの必要性を理解していくとも言えるでしょう。

今回、子どもたちが考えを構築することがらは「他者のためにどのように行動するか」という点です。子ども自身が他者のために考え行動すること自体は、身の回りの小さなできごとの一つに過ぎないと考えてしまうかもしれません。しかし、今回の物語では、孫の起こした小さな行動が、周囲の人たちを動かし、よりよい解決策を導くためのきっかけになっていきます。自分の行動が自分の中で完結するだけではなく、他者にも影響を及ぼすことができたなら――。

それは、不二聖心女子学院中学校の「一人ひとりが神の愛を受けたかけがえのない存在であることを知り、世界の一員としての連帯感と使命感を持って、よりよい社会を築くことに貢献する賢明な女性の育成」をするという考えにもつながると言えるのではないかと考えます。結果として、不二聖心女子学院中学校の大切にしている考えが強く反映されている問題であると考えます。

建学の精神。教育理念。歴史。伝統。文化。多様性。思い……。それぞれの個性に満ちた私学は、授業や行事など、さまざまな形で、そこで学ぶ人の“私”を豊かに育てていく働きかけをします。その環境は、各校独自の価値観として蓄積され、伝承されていくものです。

そんな私学の学びは、その入り口にある中学入試問題からも見て取れます。私学は入試問題を通して直接子どもたちに問いかけているのです。

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