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同時多発テロがもたらした変化 三つの一神教を学ぶ理由とは 同志社大学神学部

2020.07.29

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原子 禅
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同志社大の前身となる同志社英学校が設立されたのは1875年。校祖・新島襄は「キリスト教主義」に基づいて「一国の良心」となる人材の育成に奔走した。その流れをくむ神学部には現在、世界でも類を見ない独自の学びがある。(撮影/MIKIKO)

神学部は、キリスト教を中心とした文化、歴史、哲学などを学ぶ学部として同志社大のなかでも長い歴史を誇る。しかし2003年、変化が訪れる。きっかけはその2年前に起きた「9・11」、アメリカ同時多発テロだった。神学部長の小原克博教授はこう話す。

 「このテロにより、世界中で西洋文明(キリスト教)とイスラーム文明の対立が先鋭化していきました。その際、我々にできることはないかと考えたのです。そして、キリスト教、イスラームにユダヤ教を加えた三つの宗教が対話できる学問的枠組みを構築するために、一神教学際研究センターを立ち上げました

これに伴い、神学部も、三つの一神教を学ぶ場となった。入学する学生のうち、クリスチャンは多くても15%ほどだという。

 「海外に神学部は多数ありますが、三つの一神教を本格的に学べるのは同志社くらいだと思います。いずれかの一神教徒が多数派の国では、三つの宗教を対等に学ぶのは容易ではありませんが、いずれの宗教も少数派である日本であるからこそ、それが可能になります

学生たちは三つの宗教を学んだ後、自分が興味のあるものをより専門的に学んでいく。

 「一神教を学ぶためには、言語を習得することが重要です。神学部では、聖書ヘブライ語、アラビア語など六つの外国語科目を独自に設置しています。これも特徴のひとつです」

「宗教だけでなく、世界の文化などにも関心が高い学生が多いです」と神学部長の小原克博教授は話す
「宗教だけでなく、世界の文化などにも関心が高い学生が多いです」と神学部長の小原克博教授は話す

同志社の伝統を受け継ぐために

同志社大は、設立以来、キリスト教主義を掲げており、伝統的に社会福祉関連で活躍する卒業生が多かった。

 「その伝統を受け継いでいこうと始めたのが『宗教と社会福祉』という授業です」

これはオンライン授業と対面授業、フィールドワークを組み合わせたもので、実地では、重い知的障害のある人が暮らす「止揚学園」(滋賀県東近江市)で、共に時間を過ごす。

 「元来、神学と社会福祉は切り離せないものです。施設での体験は、学生が自分を見つめなおす格好の機会だと考えています」

神学部4年生の齋藤歌歩さんは東京都の出身だが、大学は同志社を選んだ。

 「高校がミッション系で、神学に興味を持ったことに加え、高校時代に女子教育について調べた際、ジェンダー的な差別の根本には伝統や慣習があり、それには宗教が密接に関わっていると知りました。それまで、キリスト教を始めとする宗教は、人の心をケアし、救済するものだと純粋に考えていたので、宗教が差別や争いごとを引き起こしていることに衝撃を受けました」

その疑問を解決するために、同志社で一神教を学問的に学ぶことに決めた。

 「世界では政治にも宗教が関わっています。学びを進めるにつれ、一神教を理解することは、世界を理解することにつながることがはっきりと分かりました」

神学部4年の齋藤歌歩さん。卒業後は医療関係への就職を考えているという
神学部4年の齋藤歌歩さん。卒業後は医療関係への就職を考えているという

「宗教と社会福祉」の授業を受け、幾度も止揚学園へと足を運ぶうちに自分のなかにあった壁が取れていくように感じたという。

「頭ではキリスト教と社会福祉には深いつながりがあることを分かっていたのですが、現場で実践する機会がこれまではありませんでした。学園へお伺いし、皆で一緒に食事をする際、入居者の方がもてなしてくださいます。一緒に食べて笑い合ううちに、自分のなかに、障害者と健常者とを分ける壁があったことに気がつきました」

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