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震災とパンデミック 開成前校長・柳沢幸雄氏が語るwithコロナの大学受験と学校教育

2020.08.03

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庄村 敦子
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北鎌倉女子学園中学・高校(神奈川県鎌倉市)の柳沢幸雄学園長(73)は、東日本大震災直後の2011年4月から、新型コロナウイルスの感染が拡大しはじめた今年3月までの9年間、母校である開成中学・高校(東京都荒川区)の校長を務めた。震災とパンデミックという歴史的な出来事に、柳沢氏は校長としてどう向き合ったのか。開成での思い出、新天地での学校再開後の様子、来年の大学入試などについてもうかがった。(写真は、北鎌倉女子学園のiPadを使った授業。柳沢氏は今年4月、学園長に就任した=同校提供)

【話を伺った人】柳沢幸雄さん

話を伺った人

柳沢幸雄さん

北鎌倉女子学園学園長

(やなぎさわ・ゆきお)東大名誉教授。ハーバード大大学院准教授・併任教授などを務めた。研究テーマは、空気汚染と健康の関係。2011年4月から開成中学・高校校長、20年4月から現職。1947年生まれ。開成高、東大工学部卒。趣味はゴルフ。

開成職員室をネットワーク化、津波対策の避難訓練も 

1961年4月に開成中学に入学してからちょうど50年後に、校長として母校の門をくぐった柳沢氏。就任する約3週間前には、東日本大震災が発生していた。

今年で東大合格者数39年連続日本一の同校は、行事や部活動も盛んだ。中1の夏休みには、千葉県館山市の那古海岸で2泊3日の水泳学校を実施している。

「就任1年目の水泳学校は、震災で津波被害があったため、やむなく中止。翌12年は希望者のみが参加し、『相模トラフで巨大地震が起きてから津波が来るまで1時間』というシミュレーションのもと、『海から堤防まで2分以内に戻って宿舎に移動する』という避難訓練を行いました。迅速に避難できるようになったため、数年後には全員参加の水泳学校を再開することができました」

就任当初の課題の一つがICT(情報通信技術)対応だった。生徒のためのパソコン室はあったものの、教員が職員室でパソコンを使う土壌はなかった。インターネットの導入を提案しても、個人情報流出を懸念する教員の反対で、実現まで手間取った。柳沢氏は全教員にパソコンを供与し、半ば強引にネットワーク化したという。

「新しいことを始めるときには、必ず反対する人がいます。『今うまくいっているのだから、変えなくてもいいんじゃないか』と言うのです。しかし、世の中が変わっているのだから、それに合わせて変えていかなくてはならない。前例を大事にすることは大切ですが、まず現職が検討して判断する。その判断を前例と比較して、前例と同じだったら、『先輩、さすがですね』と思い、新しい判断の方がよければ、『先輩、時代が変わりました』と、その判断を優先させればいいのです」

柳沢氏は教員に対して、「私が指示したことと、報告を受けて了解したことについては、私が責任を取る」と明言していたため、常に情報が上がってきたという。

国際化にも積極的に取り組んだ。12年夏に英語科の教員3人がハーバード大などアメリカの名門私大「アイビーリーグ」を視察。国際交流委員会を立ち上げて、13年から海外大学進学説明会「カレッジフェア」を始めた。同フェアでは大学の教職員、卒業生、学生らが大学の説明、模擬授業、個別相談などを行っている。19年は13人が米コーネル大や英ロンドン大などに合格し、5人が進学した。

また、経済的な事情を抱える受験生のために、入学金、授業料を免除する「開成会 道灌山奨学金」を15年度に設けた。当初は高校受験生のみ対象だったが、20年度からは中学受験生の申請も可能になった。

【文中写真】開成中高校長時代の柳沢氏
開成中学・高校校長時代の柳沢氏=2012年11月

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