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立教大経営学部長の山口和範さん「グローバル人材には統計的思考力が求められる」

2020.08.06

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中村 正史
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ビジネス界を中心に、データサイエンスやAI(人工知能)への関心が高まり、大学教育にも文系を含めてデータサイエンス教育が求められるようになってきました。立教大学の国際化推進担当副総長を務めた山口和範・経営学部長に、これから求められる人材と、データサイエンス教育の関わり方について聞きました。(写真は、昨年8月上旬にあった横浜市立大学データサイエンス学部のオープンキャンパス。多くの人たちが集まった)

【話を伺った人】山口和範さん

話を伺った人

山口和範さん

立教大学経営学部長

(やまぐち・かずのり)九州大学理学部数学科卒、同大学院総合理工学研究科博士課程単位取得後退学。理学博士。立教大学社会学部産業関係学科教授を経て、2006年から経営学部教授。経営学部長、副総長(国際化推進担当)を歴任した。18年から2度目の経営学部長。専門は多変量解析、統計計算、統計教育。

統計も英語も「勉強したけど使えない」とビジネス界から批判 

――文部科学省は文理を問わず、すべての大学・高専生に初級レベルの数理・データサイエンス・AIの習得を目標に掲げています。2017年に「数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアム」ができて、昨年、その下に特別委員会が設置され、山口教授はそのメンバーですが、どうとらえていますか。

私は統計が専門なので、データサイエンス教育が広がることは賛成ですが、必修化には賛成できません。文科省に呼ばれた時に、「大学教育を多様化するために大学設置基準を大綱化したのに、必修科目にするのはおかしい。国が大学の学習指導要領を小中高のように作るのはどうかと思う」と言いました。

大学は国から独立して、独自に国を変える力を養成するところです。データサイエンスより、もっと大切なものもあるし、それは残さないといけません。なぜこれだけ必修化するのかと思いました。

数理・データサイエンス・AI教育は、北海道大、東大、滋賀大、京大、大阪大、九州大の6校を拠点校に選んでスタートしました。今年4月に、私も関わる特別委員会でも検討したリテラシーレベルのモデルカリキュラムができました。

立教大学では、10年前から全学共通科目で統計教育を行っていますが、教えられる教員が少ないので、オンデマンドで提供しています。全ての大学・高専生の年間50万人を対象に必修にした時、教える教員をそろえるのは困難です。

――データサイエンスの分野では、2017年の滋賀大を皮切りに、18年に横浜市立大、19年に武蔵野大にデータサイエンス学部ができ、広がっています。

今回のデータサイエンス教育の検討には、統計と情報(コンピューターサイエンス)の両方の立場の人が入っています。情報の立場の人は、今までの統計教育に批判的です。ちゃんと役に立つ統計教育をしなければならないという流れになっています。

日本の大学における統計教育は成功していませんでした。90年代以降、コンピューターが発達していく中で、統計は勉強したけど使えないと、統計教育の改革が求められるようになりました。ビジネス界からの要請が強くなり、今のデータサイエンス教育に至ります。英語は勉強したけど使えない、英語が使える人を育てないとダメだというのと同じです。

例えば、新型コロナウイルスで数字がたくさん出てきた時に、活用して判断できるのか。海外では統計的な思考力を養成しなければいけないという流れになっています。それに加えて、無限にあるデータを資源として活用しないとビジネスができないということや、大学でも教育改革にデータを使わないといけないのに、使える人材がいないといったことから、一気に必修化しようと流れになったのだと思います。

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