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「人思い」の科学で 自然や社会の法則性を分析 公立はこだて未来大学 システム情報科学部

2020.08.26

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白石 圭
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複雑系とは、世の中にあるさまざまな事象を数学の理論や情報科学によってモデル化する、比較的新しい学問領域だ。一般的には大学院で専攻する分野だが、公立はこだて未来大では、この最先端の学問を学部生から学ぶことができる。(写真提供/公立はこだて未来大学)

たとえば野球というスポーツを知らない人がいたとしよう。その人は野球のボールがどんな素材でできているのかをいくら分析しても、野球のことは理解できない。どのようにボールを用い、どのようなルールで選手が動き、何によって勝敗が決まるのか――個ではなく全体の「システム」に迫ることで、野球のしくみが理解できる。複雑系科学とは、複雑なものを要素で分けて単純化するのではなく、システムそのものを数学の理論で分析する学問だ。

複雑系知能学科長の佐藤直行教授はこう話す。

「1980年代に生まれたばかりの学問で、対象は交通渋滞の自動回避、地震の予測、生物の体表模様のパターン認識など多岐にわたります。自然や社会の法則性を簡単な数式で表すことが複雑系科学の始まりなのです」

複雑系知能学科長の佐藤直行教授。単にものづくりの方法を覚えるだけではなく、「物事を科学的に理解するアプローチ」の重要性を強調する
複雑系知能学科長の佐藤直行教授。単にものづくりの方法を覚えるだけではなく、「物事を科学的に理解するアプローチ」の重要性を強調する

複雑系コース4年の山崎旅詩(りょうた)さんは、「生命科学と複雑系」という授業で複雑系の面白さに気づいたという。

「脳は複雑で、神経が集まってできているにもかかわらず、神経だけを細かく調べても人の思考のしくみは解明できません。神経同士がどのようにつながって、全体のシステムをつくっているかを考える必要がある。ボトムアップ的なアプローチでは説明できないこともあるという、新しい視点をもらえた授業でした」(山崎さん)

チーム研究を終え感涙する学生も

1年次は学部共通で、基礎数学やプログラミング、マイクロコンピューターを操作する実習などを行う。2年次から学科・コースに分かれ、情報系、数物系、そして脳神経科学や経済学などを含む複雑系の3分野を横断的に学ぶ。

「コンピューター科学を身につけたいというだけでなく、AI(人工知能)を基礎から学びたい、数理が大好きで勉強したいという動機を持つ学生もいます」(佐藤教授)

一番の目玉は3年次必修の「プロジェクト学習」だ。学科・コースを超えたチームで一つのテーマに取り組み、7月の中間発表と12月の発表会に向け、学生主導で進められる。地域社会や企業と連携するプロジェクトが多く、過去には通信大手3社などと協力してスマートフォンのアプリサービスを開発したチームもある。

「前期と後期で学生の雰囲気が全然違っているんですよ」と佐藤教授は顔をほころばせる。

「最初は受動的ですが、次第に役割分担や日程調整も学生が進めていってしまう。1年限りの学科を超えたチームですから、研究目標を達成して、みんなで泣いてしまう場面も見ます」(佐藤教授)

プロジェクト学習は学生主体で進められる。教員も手助けするが、チームによっては週3回、学生だけで集まって研究することもあるという
プロジェクト学習は学生主体で進められる。教員も手助けするが、チームによっては週3回、学生だけで集まって研究することもあるという

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