慶應SFC30年、立命館APU20年――日本の大学をどう変えたか

APU編③◆首都圏からの学生増は20年かけて築いた成果

2020.08.28

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中村 正史
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自分と会社の成長スピードが合わない 

その会社に入社して3年目にカリフォルニアの子会社に派遣され、財務や経理の専門知識を生かして同部門のチームリーダーを務めた。米国の公認会計士の資格も取った。1年半後に本社に戻ると、チームの一番下っ端になり、仕事上の権限も小さくなった。人事部に「いつ昇進できるのですか」と聞きに行くと、「早くてあと10年」と言われた。「自分の成長スピードと会社の成長スピードが合わない。新しいところで挑戦したい」と、世界規模のビジネス人材登録サイトLinkedInに登録し、アマゾンジャパンなど2社から内定をもらった。

アマゾンではファイナンス業務に携わった後、日本の事業者が海外で展開するビジネスを支援している。6月下旬には「アマゾンジャパン、越境EC支援サービス開始、専属チーム発足」と報じられた。チームの責任者だ。

VPJを設立したのは2016年。日本にいるベトナム人のコミュニティーを組織し、若手のキャリアアップを支援したり、ビジネスのアイデアを生み出す環境をつくったりする活動を行っている。イベントも多く、ソフトウェアやIT系で働く人たちが集まる「Viet Tech Day」には、300人以上が集まる。

「日本には37万人のベトナム人がいますが、コンビニや工場で働くイメージが強い。子どもたちが大人になった時に、成功したベトナム人がたくさんいて、誇りを持てるようにしたいです」

【文中写真】フォンさん@VPJ
VPJのイベントに集まった若手のベトナム人を前に話すフォンさん

前出の横山副学長が、首都圏出身者が増える一つの導火線になったと話すのが、早稲田塾とのつながりだ。2004年にAPUのモンテ・カセム学長(当時)や慶應SFCの村井純教授(同)らを招いて公開授業をしてもらったのをきっかけに、06年から夏休みなどにAPUの10カ国の国際学生と高校生が議論する「異文化交流プログラム」を開いている。「社会の多様性」などをテーマに、3日間、朝10時から夜8時まで、英語でグループワークを行う、なかなかハードな内容だ。

早稲田塾AO指導部の中川敏和部長はこう話す。

「高校生たちはいろんな国の人と話すことで、いろんな気づきがあり、変わります。大学で何をしたいか、社会で何をしたいかを考え、自分と大学をマッチングさせるというのがうちの方針で、こうしたプログラムはその一環です」

プログラムをきっかけにAPUの多様性に関心を持つ高校生もおり、最近では約40人がAPUにAO入試で合格するようになった。

「APUに行く生徒は世界でもまれたいとか、チャレンジ精神のある人が多い。慶應SFCとは学問領域が違いますが、SFCもチャレンジする大学なので、目指す生徒は似ているところがあります」

大学入試が従来のペーパーテスト偏重から、志望理由や高校時代の活動などを総合的に判定する方向に変わっていることも後押ししているだろう。

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