慶應SFC30年、立命館APU20年――日本の大学をどう変えたか

APU編⑥◆日英2言語による授業が変えた留学事情

2020.09.04

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中村 正史
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この30年の日本の大学に大きなインパクトを与えたのは、「大学改革のモデル」と言われた慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)と、学生・教員の半数が外国人という立命館アジア太平洋大学(APU)だろう。奇しくも今年、SFCは30年、APUは20年を迎える。両大学は日本の大学をどう変えたのか、そして現在も開設当初の理念は受け継がれているのか、連載で報告する。
2000年代以降、大学も企業もグローバル化が急速に進み、グローバル教育が求められるようになったが、その先陣を切ったのがAPUである。その後、各大学が国際系の学部を次々に開設し、その動きは今も続いている。その現在とは、そして卒業生たちのその後は――。(写真は、米国・シリコンバレーの「GoDaddy」で会社の同僚と語らうシュラッダさん=左)

国際学生の出願時の英語力は英検1級~準1級レベル

APUが画期的だったのは、学生も教員も外国人が50%、留学生は50カ国・地域以上という「三つの50」を掲げ、そのために日本語と英語の2言語で授業を展開したことと、秋入学を本格導入したことだ。国際学生の7割は秋に入学する。

APU初代学長を務めた坂本和一氏は、こう話す。

「日本語の壁を取り除いたことが大きかった。日本語ができなくても英語で学べるとしたことで、欧米への留学を考えていた優秀な人がAPUに目を向けてくれました」

APUがターゲットにしたのは、英語力が高い学校やトップ校だった。生徒の進路に影響力を持つ校長や進路指導教諭に会い、留学フェアがあれば出かけて行った。

APUを取材して驚いたことの一つは、国際学生の英語力が極めて高いことである。最近の資料では、国際学生の出願時の英語の平均スコアは、学生数が多い国順にTOEFL iBTで、韓国88、インドネシア85、ベトナム99。英検だと1級~準1級のレベルだ。韓国は普及しているTOEICだと881点。

「海外の大学入試は共通試験が多く、英語力が高い学生は国語、数学の能力も高い」(担当職員)という。

開学初期には、どんな国際学生が入学したのだろうか。

インドからの1期生、シュラッダ・バラクリシュナンさん(39)は、現在、米国・シリコンバレーでIT企業「GoDaddy」のシニアプロダクトマネージャーを務めている。

APUに入ったのは、ニューデリーの高校に通っていた時、日本の大学ツアーに行った校長から紹介されたのがきっかけだった。留学する人はほとんど米国かカナダの大学に行く。中流家庭で育ったシュラッダさんにとって、経済的に留学は夢にすぎなかったが、APUや文部科学省の奨学金のおかげで現実のものになった。

「校長先生は、みんなと違うことをしたがるアドベンチャー好きな私のことをよく知っていました。APUのことを調べてみると、学生も教員も外国人が半数となることや、他の日本の大学は1~2年間、日本語を勉強しないと正式に入学できないのに、APUはすぐに英語で授業が受けられると聞いて、興味を持ちました」

卒業後は、日本で社会人を経験したいと三洋電機に入社し、2年間、国際広報を担当した。当時の野中ともよCEOに随行することもあった。世界をもっといい方向に変えられないか興味があり、退職してピースボートに通訳者として乗船し、100日間で22カ国を回った。米国に渡ってNPOの米国国際教育研究所(IIE)のサンフランシスコオフィスに4年間勤め、中東や北アフリカの低収入の女性が自立できるようITスキルを教育した。

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