慶應SFC30年、立命館APU20年――日本の大学をどう変えたか

APU編⑨◆出口治明学長インタビュー(上)「地域開発と観光の新学部を2023年に開設」

2020.09.11

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中村 正史
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入試改革と高校との連携で日本の教育を変えていく 

――新学部構想は出口さんが学長になる前からあったのですか。

構想はありましたが、中身は決まっていませんでした。昨年1年間かけて検討し、地域開発と観光に決めました。

――APUの課題の一つは、財政基盤の強化だと思います。国際学生の奨学金があるので、大学経営は大変でしょう。

僕が着任する前から大学は黒字になっています。基本は学生の授業料でまかなっていくしかありません。今年から授業料を上げましたが、学生や保護者に授業料の負担をお願いする前に、まず大学として目いっぱい努力をしなければなりません。歴史の浅いAPUが企業から多額の寄付を募るのは現実的ではないので、寄付は個人をメインに設定して、クレジットカードで引き落としができるようにしました。また企業のリカレント教育を強化しています。社会人を対象にした人材育成プログラムはこれまで2カ月か4カ月のプログラムしかなかったので、昨年から例えば2泊3日で企業の幹部に来てもらう短期集中型の研修を始めました。いろんな試みにチャレンジするために事業課という組織を新しくつくりました。

――来年の2021年度一般選抜では、共通テスト利用型の一部で数学Ⅰ・Aを必修化しますね。

APUは探究力や考える力を大事にしています。文系でもロジカルシンキングが大事で、そのためには数学が大事だと意識づけたいのです。

――志願者が減りませんか。

極論すれば、目先減ってもいいという覚悟です。そういう小さいことではなく、日本全体で数学を大事にしたいという理念を持っています。

入試改革と並行して、高校と連携して日本の教育を変えようとチャレンジしています。これまでの高大連携は、18歳人口が減る中で、高校を囲い込んで無試験の推薦枠を与え、入学者を確保しようという、スケールの小さいものでした。これは本当の高大連携ではないと、僕は思います。

日本の教育は、製造業の工場モデルに適応して、偏差値が高い、素直、我慢強い、協調性がある、先生に従う、の5点セットで行われてきましたが、これではスティーブ・ジョブズは生まれません。人間は違って当たり前で、平均はないのです。そこで、教育を変えようという志を持った高校と連携し、夏休みなどにAPUに来てもらって学生と高校生が交流し、協同で探究力や問いを立てる力を育てたい、先の5要素と決別して日本の教育を変えたい、と考えています。

この取り組みは僕が赴任してゼロから始めて、すでに30校近い高校と連携しました。入試改革と合わせて、小さいながらも教育界に一石を投じたいと思っています。

――次の学長公募の推薦が7月から始まっていますね。

公募に応じて書類を出しました。選ぶのは選考委員会ですから、選ばれるかどうかはわかりませんが。

(第10回に続く)

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