早生まれに負けない子育て

早生まれは高校入試にも影響!? 東大教授が説く「不利のはね返し方」

2020.09.15

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山下 知子
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――早生まれの子の親は、非認知能力のほうを考えたほうがいい、と。

長期的な成長を考えればその可能性が高いです。さきほどのグラフ1が示しているように、認知能力は生物的な成熟によって、20歳にもなれば差は目立たなくなります。体力も知力も、詰まるところ、放っておけばいずれ追いつくのです。ただ、非認知能力はそうはいかない可能性があります。焦って目先の認知能力を上げることに注力するよりも、非認知能力を高めるほうに少し力を振り向けたほうがよいと思います。

そこで大事なのは、早生まれの子に「自分はできない」と思わせないようにすることです。そうした環境を整えることが、早生まれの子の親ができることではないでしょうか。一例ですが、習い事に通わせるときも、学年ではなく能力別にクラス分けされた教室のほうがよいでしょう。そうした教室であれば、早生まれの子も学年内での差を感じることなく、取り組めると思います。

――3月末生まれの同僚は幼いころ、祖母に「比較するなら一つ下の学年としなさい。そしたらあなたは体も大きいほうでしょ?」と言われ、救われたと言っていました。

そうした声かけは有効ですね。一見、能力が低く見えるのは学年内で「若い」からであって、その子自身の問題ではありませんから。学年内の相対的な能力ではなく、きちんと個人の能力を見ることが大切です。

早生まれは入試に加点しては?

――新型コロナウイルスの感染拡大で、9月入学の是非が話題になりました。入学の時期が変われば早生まれの定義も変わります。早生まれが不利にならない制度は考えられないのでしょうか。

政策面で考えられることはいくつかあります。アメリカやオーストラリアなどには、生まれ月などで保護者が入学時期を変更できる仕組みがあります。日本のように、生まれた日が1日違えば別の学年というように、学年を厳格に定義、運用している国のほうが珍しいです。ただ、保護者に判断を委ねると、保育料を追加で負担できない貧困層は入学を遅らせられなかったり、同じ学年内でさらに年齢差が広がったりする問題点があり、弊害もあります。

ほかにも、入試などの選抜の場面において、生まれ月を考慮した合格枠を設けたり、点数を補正したりするといった方法があり得ます。例えば3カ月ごとに区切って、統計学を使ってフェアな補正をしたらどうでしょう。

小学校の低学年は、生まれ月によるクラス編成をしてもいいかもしれません。このころは、特に男子の体力差は歴然としているので、体育の授業に取り入れるのは有効だと思います。

早生まれの子は不利であると、教員がこれまで以上に強く認識することも大切です。9月始業の米国でスポーツクラブのキャプテンになる子の生まれ月を調べたところ、6~8月生まれが少なかったという結果が出ています。学校現場では、意識的に早生まれの子に機会を与えてみてはいかがでしょう。

――早生まれが不利だという指摘は以前からありました。なぜ解決への動きが起こってこなかったのでしょうか。

早生まれ問題は教育学や心理学では昔から取り組まれてきた分野で、気づかれていなかったわけではありません。にもかかわらず放置されてきた原因は、いくつか考えられます。一つには、どこかで区切りをつけないといけないため、誰かが不利を被るのは仕方ない、と考えられてきたからです。二つ目は、個人差のほうが大きいためです。例えば、元プロ野球選手の桑田真澄さんは、その学年で「最年少」の4月1日生まれですが、甲子園やプロ野球で大活躍しました。こうした成功例や、「自分は早生まれだがうまくいった」という声にかき消され、統計的な差が見えにくくなっているのです。

今回の研究で、早生まれは想像以上の影響があると分かりました。原因は学年の区切りという社会の仕組みにあるのですから、完全な解決は難しくても、和らげるための施策を講じていくべきではないでしょうか。

1985年8月、甲子園球場で力投するPL学園の桑田真澄投手
1985年8月、甲子園球場で力投するPL学園の桑田真澄投手

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