コロナ時代の「留学」

オンラインも生かしつつ、リアルの価値が鮮明に 支援を続ける「トビタテ!」事務局に聞く

2020.09.14

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上野 創
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若者の背中を押し、海外へと送り出してきた官民協働の支援プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」。予定した最終盤の、次の展開を模索するタイミングで、コロナ禍とぶつかりました。学生や生徒を国外へ送り出せない事態のなか、どう対応しようとしているのか。荒畦悟・プロジェクトマネジャー(43)に話を聞きました。(写真は、第1期生の壮行会。323人の大学生らが選ばれた=2014年7月、文部科学省講堂、事務局提供)

【話を聞いた人】荒畦悟さん

話を聞いた人

荒畦 悟さん

トビタテ!留学JAPANプロジェクトマネジャー

(あらうね・さとる)民間企業を経て2014年「トビタテ!留学JAPAN」創業メンバーとしてプロジェクトに参画。大学生コース立ち上げ、支援企業連携、委員会運営等プロジェクト運営全般に携わる。

留学の中断や延期で約1千人が期限を延長、オンラインの支援も

「トビタテ!留学JAPAN」とは?

文部科学省の留学促進キャンペーン。主な取り組みである「日本代表プログラム」は民間企業などから募った寄付金で、高校生や大学生などの留学費用を手厚く支援する官民協働の事業。文部科学省が「2020年度までに1万人を海外へ派遣」という目標を掲げ、14年に始まった。選考では英語力や学業の成績を問わない代わりに、若者が自分で考えた留学計画をプレゼンする。合否は、「情熱」「好奇心」「独自性」を重視して決めるという。これまで248社・団体から計118億3千万円の寄付を集め、約7800人の若者が海外へ飛び立った。

――感染が拡大したときの影響は?

大学生については年2回、送り出してきたのですが、昨年夏からこの春までに出発する条件だった第11期生たち約530人の多くが留学を中断して帰国を余儀なくされました。出発を延期した人も16人いました。

また、その後の12期生約510人は、3月にオンラインで壮行会と事前研修も終えていたのですが、感染が拡大して出国が難しくなりました。多くは夏に渡航し、秋から授業が始まりますが、現時点でほぼ足止めとなっています。

そして、トビタテの事業として最後の募集となるはずだった13期も、書類審査が進んでいましたが、感染拡大で採用手続きを中止しました。

この夏に渡航する生徒が多い高校生も、最後となるはずだった第6期の募集を途中で中止しました。

――延期したその後は?

これから行くはずだった11期の一部と12期の学生は、留学を始める期限をいったん来年3月末まで延長し、その後、さらに再来年3月末まで延ばしました。留学計画の目的などが維持されるのであれば、留学先の国・地域や期間を変更することも認めます。

また、一時帰国を強いられた学生がもう1度、同じ留学先へ行って留学を再開する場合は、再渡航の支援もします。

中断を余儀なくされた学生のなかで、緊急帰国後にオンラインで在学や活動が続けられる場合、もしくは続けたいと思う場合には、奨学金を出すことも決めました。

空白、就活…それぞれに悩み つながって気持ちをキープ

――かなり柔軟に対応することにしたのですね。それにしても、学生たちは相当にショックだったのでは?

トビタテは、留学目的や行き先、期間などを学生自身が決めて「留学計画書」を作り、選考に臨みます。情報を集めて、一生懸命、計画を練りあげるわけです。そうやって時間をかけて準備をし、選ばれてさらに気持ちが高まっていたわけですから、つらかったと思います。

多くの学生は、帰国後の進路で悩んだり、迷ったりしています。そこで、トビタテ事務局として何かしら支援できないかと思い、オンラインの相談会を開いてきました。トビタテによる留学を経験した先輩たちが、相談に乗る態勢をとっています。具体的なアドバイスもしますが、帰国後もオンラインばかりで人と接する機会すらない学生たちに、「悩んでいるのは1人ではないよ」と伝える効果も大きかったみたいです。

帰国したものの、再渡航をしたいと思っている人たちもいますから、フォローアップの機会を9月中につくるつもりです。自分だけで抱えていると苦しいですよね。この状況でも頑張っている人の存在を知って、「自分もやってみよう」「元気をもらった」みたいな機会になればいいなと。

いったん、今までの成果を棚卸しして、再渡航に向けて準備しようという狙いもあります。

――帰国した人はどんな悩みがありましたか。

理系も文系もいて、学年も行き先も違うので、「悩み」の中身はいろいろです。

1年間、大学を休学して留学した学生も多いので、「途中で帰ってきて、空白の時間ができてしまった」という声が多くありました。「4年間の大学生活のプランが狂ってしまって戸惑っている」という学生もいました。

トビタテの場合は、語学や専門分野について学ぶだけではなく、インターンシップやボランティア、フィールドワークなどの「実践活動」を求めていて、みんな留学計画書に盛り込んでいます。

そうした活動を留学の後半に予定していた学生の中には、中断によって「現地での活動が醍醐味だったのに、できなくなってしまった」と嘆く声や、「『普通の留学』になってしまい不本意」「アピールポイントがなくなってしまった」といった感想もありました。

さらに、感染が収束して留学の続きを再開できるのか、別な形での留学を目指すべきか、就職活動や大学院への進学に切り替えた方が良いのか、決めきれずに「宙ぶらりん」と心境を語る学生もいました。

仕方なく就職活動に臨むことにした学生の一人は、「一応、やってはいるけれど身が入らない」と言います。

――延期の学生たちはどうですか。

もちろん、ショックはありますが、留学を志しながら飛び立てていない者同士、ネットワークをつくり、自主的な活動や議論をいろいろしていました。

そもそも、何をもって「留学した」と言うのかとか、こうなったことで現地に行くことの価値を改めて考えようとか。全員が参加しているわけではないですが、つながっている人たちはとても熱心です。

面白いのは、彼らが早朝、自主的にオンラインで開いている会。得意なものについて発表したり、自分が興味のあることについて話したり。よく続いているなあと感心します。

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