学習と健康・成長

「優しく頼む」「上手に断る」ソーシャルスキルを磨いて、自分に自信が持てる子に

2020.09.25

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阿部 花恵
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多様なバックグラウンドを持つ人との関わりが増えた現在、「他人と上手に関わるための技術やコツ(=ソーシャルスキル)」は必要不可欠なものとなりました。一方で、少子化やライフスタイルの変化によって、「今の子どもたちは他人と関わる力が育ちにくくなっている」という見方もあります。ソーシャルスキルはどうすれば獲得できるのか、専門家に伺いました。

Yayoi_Watanabe

話を伺った人

渡辺弥生さん

法政大学文学部心理学科教授

(わたなべ・やよい)大阪府生まれ。筑波大学卒業、同大学大学院博士課程心理学研究科で学び、筑波大学、静岡大学、ハーバード大学客員研究員、カリフォルニア大学サンタバーバラ校客員研究員を経て現職。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長。教育学博士。専門は発達心理学、発達臨床心理学。単著に「子どもの『10歳の壁』とは何か?」「感情の正体」「親子のためのソーシャルスキル」、編著に「小学生のためのソーシャルスキル・トレーニング』『中学生・高校生のためのソーシャルスキル・トレーニング」など。

ソーシャルスキルとは?

――そもそも、「ソーシャルスキル」とはどんなものなのでしょうか?

ソーシャルスキルとは、「自分も他人も大切にしながら、社会生活をワクワク紡いでいく術(すべ)やコツ」と私は定義しています。「他人と上手に共存して、自立していくための社会性」とも言い換えられるでしょう。

他人の気持ちを理解する、優しく頼みごとをする、上手に断る……。これらのソーシャルスキルは、大人に成長するまでの過程で、すべての子が人生の備えとして身につけておくべきだと思います。

例えば、大抵の親は子どもに「友達と仲良くしよう」「他人に迷惑をかけちゃダメ」と言いますよね。でも、こういった言葉は実は抽象度が高い言葉掛け。具体的にどのような考え方・行動でそれを表せばいいのかまでは、ほとんどの子どもは理解できません。

それを子どもが理解・イメージしやすいように、発達段階に基づいて術やコツといった形に落とし込んで教えていく。こうした発想からソーシャルスキルトレーニングは生まれました。

――社会(ソーシャル)で他者と上手に共存するための技(スキル)ということですね。一方で、ソーシャルスキルは日々の生活で自然と身につくもののように思えますが……。

かつてはそういった側面もあったのですが、時代の移り変わりによって子どもを取り巻く社会環境は大きく変化しました。現に、望まぬ不登校やいじめの件数は1990年代からずっと増加していますし、引きこもりを続けたまま大人になってしまう事例も少なくありません。

その大きな原因のひとつとして、「対人関係の悩み」が挙げられています。つまり、人と上手に関わるスキルを学ばないまま、大人になってしまう。そういったケースが昨今は少なくありません。

学童期の子が自由に遊べる空間の減少によって、子ども同士が自然発生的に遊べる機会が失われた、核家族化が進んだ、地域の大人との交流が減った、塾や習い事で子どもが多忙になった……など、さまざまな要因が子どものソーシャルスキルの獲得を妨げているのが現状です。学校や習い事の先生は、ソーシャルスキルまで含めて教えてくれるわけではありませんから。

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