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増える理系志望、「理系がお得」は本当か? 濱中淳子・早大教授に聞く

2020.09.23

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中村 正史
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専門知の時代だからこそ、数字も言葉も重要

――最近はIT系が人気です。世の中が理系を志向している感じがあり、子どもを理系に進ませたいと考えている父母も多いようです。

親は安定を求めるからです。資格職など、はずれがない仕事に就いてほしいと考える親が多いのです。数年前に、高校生の母親を対象に子どもの進路への関わり方について調査しました。分析から見えてきたのは、母と子がしっかり寄り添いながら進路を選択する姿です。今の子どもは素直に母親の言うことを聞きます。母親は安定志向で、資格、推薦、地元というのがキーワードです。早めに安心したいのです。

ただ、母親がどこで意見を形成しているかを世代に分けて調べると、かつては夫と相談していましたが、今は夫には相談せず、情報源はインターネットとママ友です。「これからはAIの時代よね」などと浮ついた情報に飛びついて、何となく理工系がいいのではと感化されている可能性があります。

――高校で文系、理系に分ける日本の教育が元凶だという意見が昔からあります。

一部進学校を中心に、文系・理系分けをしないところはありますが、1年で文系か理系かを決めさせる高校も少なくないです。数字と言葉はどの領域でも大事なのに、この文理選択で力を入れる教科が狭まってしまうとすれば、それは残念なことです。文系を選択した高校生が数学を勉強しなくなるというのは、よく聞く話ですよね。ただ、さらに残念だと思うのは、この「限定した学び」が大学に進学してからも基本的に変わらないことです。考えてみれば、大学に入学してから幅を広げることもできるのに、およそ高校の時の選択のままの状況が続いてしまっています。

優れた理系の研究者は、言葉の大切さを意識しています。数字が読める文系と読めない文系とでは、構築できる議論に決定的な差があります。

今は専門知が問われていると思います。新型コロナウイルスでもそうだし、大学入試改革もそうですが、数字と言葉の両方を大切にしながら伝えないと、説得力のある話はできません。専門は大事で、そもそも専門がないと物事の議論の土俵に乗ることすらできませんが、問題はそこから先で、およそ理系の人は数字の世界で話をして、言葉を持っていない。理系の発想を豊かに表現できていません。反対に、文系の人は数字が読めないので、自分でデータを集められず、なにより理系の話が理解できません。お互いに閉じているのです。どこかで交わることが必要です。

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