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増える理系志望、「理系がお得」は本当か? 濱中淳子・早大教授に聞く

2020.09.23

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中村 正史
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企業に人気の工学系修士、問題は文系の修士・博士と理系の博士

――理系は大学院まで行くのが当たり前になりつつあります。メーカーなど企業も修士や博士などを積極的に採るようになっていませんか。

理系の修士は1960年代、70年代から強い。当時、理工系の人材を倍増しようという計画があり、教える教員も必要になって旧帝大系の大学院を拡充しました。企業は修士がほしかったのではなく、旧帝大系の人材がほしかったので、修士を採ることになったのです。すると院卒が意外に役に立つことに企業側が気づきました。工学系修士は大学院の唯一の成功例です。

問題は文系の修士と博士、理系の博士です。カギになるのは、企業が工学系修士のように、大学院での学びに価値があることに気づくかどうかです。製薬メーカーはグローバル企業と競争しているので博士を採りますが、多くの企業はそこまで進んでいません。

一言で言えば、企業側の経験値が足りない。企業人の多くは院卒が周りにいないので、大学院で勉強することの意味がわかりません。大学がレジャーランドと言われた世代が幹部でいると、採用の際の面接が成立しません。理系の採用の場合は、専門がわかる人を面接官に配置するのでいいのですが。

最近は女性が働くのが当たり前になりましたが、1980年代から30~40年経って、女性の優秀さに気づいた。それくらいの時間がかかるのです。大学院は規模も小さいし、企業が経験値を上げることが難しい。工学系修士のような爆発的な変化が起きるまでには時間がかかるでしょう。

――ベンチャー企業には理系の院卒が集まっているところがあります。

そういうところから動きが出ています。院卒が使えることに気づいている人がいるからです。

――文系は理系の、理系は文系の基礎的な素養が、なぜ必要なのでしょう。

物事を進める時には、データからストーリーを紡ぎ出すことが必要です。データはそれ自体ではどうすればいいかは語ってくれません。数字と言葉に敏感になりながら、どうするかを自分で考えるのです。グループ討論が有効な場合もありますが、残念ながら不毛な棲み分けで終わってしまうことも多い。まずは自分一人の頭の中で考えられるという点がポイントです。そして、それができるようになるためには、社会経済や倫理といった点にまで視野を広げることができる力も必要になってきます。文系、理系というのはあくまで出発点であって、大事なのはそこから先ですね。

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