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増える理系志望、「理系がお得」は本当か? 濱中淳子・早大教授に聞く

2020.09.23

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中村 正史
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灘高校など関西の進学校を中心に、ここ十数年、これまで以上に理系志望者が増えています。最近は理系の方が就職がいいこともあって、子どもを理系に進ませたいと考える保護者もいます。「理系はお得」は本当なのでしょうか。アンケートやインタビューなどの社会調査に基づく分析を続けている濱中淳子・早稲田大学教授に聞きました。(写真は、東北大の理系女子育成合宿に参加した高校生=2016年10月)

濱中淳子さん

話を聞いた人

濱中淳子さん

早稲田大学教育・総合科学学術院教授

(はまなか・じゅんこ)東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。専門は、教育社会学、高等教育論。リクルートワークス研究所研究員、独立行政法人大学入試センター助教、准教授、教授、東京大学高大接続研究開発センター教授を経て、2019年より現職。著書に『検証・学歴の効用』『「超」進学校 開成・灘の卒業生――その教育は仕事に活きるか』など。

開成、灘、浦和、湘南の卒業生を調査してみると……

――このところ理系の就職率が高いこともあって、「理系がお得」という風潮がありますが、文系と理系で差があるのでしょうか。

2013年から18年にかけて、開成(東京)と灘(兵庫)の私立高校と、浦和(埼玉)と湘南(神奈川)の県立高校に協力してもらい、主に30~50代の卒業生を対象に、中高時代や大学時代の状況、就職後の状況、現在の仕事などについて調査しました。この中で年収も聞いていますが、人文・社会系の学部を出た卒業生の平均年収は1110万円、理・工・農学系の学部は965万円になっています。医療系は1953万円、教育系は819 万円です。医療系は勤務医と開業医で違い、ばらつきが大きいです。

――一般的な年収と比べるとかなり高いですが、この結果を見ると、医療系を除けば、必ずしも理系がお得とは言えませんね。

開成や灘の人文・社会系は、年収の高い商社や金融が数字を引っ張っています。理・工・農学系は人文・社会系に比べて年収がいいわけではありませんが、ばらつきが小さい。安定していると言えます。

別途、ここに一般大卒男子(首都圏の高校を卒業し、大学に進学した大卒男子)のデータがあります。こちらは、全体で見ると、理・工・農学系のほうが若干、恵まれています。年齢、企業規模、転職、大学時代の専門領域で年収を説明する簡単なモデルで推計すると、理・工・農学系は人文・社会系より7.3%年収が高いという結果も得られます。ちなみに医療系は39.9%年収が高いです。

――文系の場合は年収が高い業種にどれくらい就職しているかによるのでしょうが、両方の結果を見ると、どちらがお得とは言えなさそうです。

理系は昔から年収がそんなに高いわけではありません。ただし、はずれもない。文系は営業、事務、企画などに分かれ、企画部門は年収が高い人がいますが、職種によっては低い人も多いです。

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