『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

「自分」を主語にして語れる人間を目指そう! 民間出身の日野田校長の教育実践とは

2020.10.05

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桜木 建二
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異色の経歴と独創的な教育実践で注目を浴びる教育者がいる。日野田直彦さんは、大阪の箕面高校に公募校長として赴任するやいなや、海外の名門大学への進学者を多数輩出して話題を呼んだ。現在は東京に移り、武蔵野大学中学校・高等学校の校長を務めている。

どうやら俺の「東大へ行け!」という方針とは違う角度から、子どもを伸ばす方法論を展開しているようなのだ。これは気になるじゃないか。東京都西東京市にある学校を訪ねて聞いてきた話を、心して頭に叩き込もう。

先生の仕事量を整理したら、海外大への進学も増加

教育実践はどのようにしてきたのだろうか。

「具体例は細かいものからいろいろあります。まず、あれこれあった補習や補講はやめにしました。そういうのは参加しているというだけで、なんとなく満足してしまうことも多いですからね。

そもそも先生たちがオーバーワーク気味だったので、負担を軽減する必要もありました。生徒のためなら何事も時間をかけるのがいいとの発想を改めてもらい、いつでも休めるようにして、長い休暇もきちんと取ってもらえるようにしました。

先生が疲れた顔をしていたら生徒にはすぐわかるうえに、そういうのは伝染してしまうもの。先生には、子どもたちのためにも、ひとりの大人としても、生き生きとしていてほしいと考えています。

海外大学への進学も増加の一途です。そのために必要な情報は適宜生徒たちへ伝えていますし、相手の大学からも続々と推薦枠をいただけるようになりました。

実感と関心を醸成してもらうために、米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)を訪れて、教育系ベンチャーとコラボで独自開発したアントレプレナーシップ研修プログラムを実施しています。

そちらの方面には僕の知り合いや友人が多いので、いまのところ僕が引率しています。本校の教員にも複数同行してもらって、現場で行ったことを日本に持ち帰り、学校の授業にも還元しています。

内容としては、デザインシンキングをもとに、身近な社会課題を解決するために『その人にしかできないこと』を、哲学を含めて深掘りし、本当に解決したいという『価値』と『意味』を見出させるものです。

最終的には、MIT関係者に短くプレゼンテーションして、フィードバックをもらい、今後のモチベーションにつなげます。

僕に言わせれば、世界で最高に『イカれた人たち』がそこには山ほどいる。彼らのプレゼンを聞き、さらにそれを自分が考える課題解決の糸口としてもらうという内容で、参加した生徒たちの目の色は、これで少しずつ、しかし大きく変わっていくものですよ」

上手なアイデアの吸い上げが学校改革につながった

英語と国語を掛け合わせて、言葉の運用がきちんとできるようになるための「言語活動」という授業時間を取り入れるなど、武蔵野大学中高はカリキュラム面に手を入れることも大胆にしているんだ。

ただしこうした新しい施策について、日野田さんはトップダウンで拙速に決めることをしない。生徒や先生のやりたいことを吸い上げるボトムアップの手法で、あらゆるものごとを進めていくのだ。

「そのためにマインドマップづくりやブレインストーミングなど、ディスカッションや意思決定に役立つ方法が学べる機会を生徒・先生方に設けています。学校生活のオーナーシップは、自分たちで握っていてもらいたいので。

みずから考える力や発信力がつくからでしょう、補習や補講をすべて取りやめても、学校全体のいわゆる学力・偏差値はぐんと上がっていますよ。

学校説明会への参加者は激増し、受験者、入学者ともに急激に増えている状態です」

短期間での変革を実現したのはどうやら、先生にも生徒にも「自分たちで考え、やりたいことをやってもらう。そのための武器はきちんと渡す」という方針が貫かれているからなのだな。

(C)三田紀房/コルク「ドラゴン桜2」から
(C)三田紀房/コルク「ドラゴン桜2」から

次回は、日野田さんが日々の現場で生徒とどのように向き合っているのか、いまの教育に求められていることは何か、といったことを聞いていくぞ。

(山内宏泰)

ドラゴン桜2
日野田直彦さん

話を聞いた人

日野田直彦さん

武蔵野大学中学校・高等学校校長 兼 武蔵野大学附属千代田高等学院校長

1977年生まれ。幼少期をタイで過ごす。同志社大学卒業後、大手進学塾に入社。2008年、奈良学園登美ヶ丘中学校高等学校の立ち上げにかかわる。14年、大阪府の校長公募に手を挙げ、同府立箕面高等学校校長に。36歳で府立学校最年少の校長となる。18年度から現職。20年度からは、武蔵野大学附属千代田高等学院校長も兼務。著書に『なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか!?』(IBCパブリッシング)がある。

『ドラゴン桜2』

作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式マガジン」(note)で連載中。

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