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優秀な東大生ほど一つの企業にしがみつかない 各務茂夫・東大教授に聞く

2020.10.05

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中村 正史
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中央官庁や大企業にキャリアを託してきた東大生の志向が変わっています。起業したり、ベンチャー企業に入ったりすることが、一つの選択肢になっています。東大にアントレプレナー道場を開設し、起業家教育やベンチャー支援を担ってきた各務茂夫・大学院工学系研究科教授(産学協創推進本部副本部長)に東大出身者の起業の現状や、東大生の意識の変化を聞きました。(写真は、東大卒起業家の代表的存在、ユーグレナの出雲充社長=右。バイオジェット燃料の供給を目指し、2017年には長崎県の地域航空会社と資本業務提携した)

各務茂夫さん

話を聞いた人

各務茂夫さん

東京大学大学院工学系研究科教授、産学協創推進本部副本部長

(かがみ・しげお)一橋大学商学部卒、スイスIMEDE(現IMD)経営学修士(MBA)、米国ケースウェスタンリザーブ大学経営学博士。ボストンコンサルティンググループを経て、コーポレイトディレクション(CDI)の設立に創業パートナーとして参画、取締役主幹、米国CDI上級副社長兼事務所長を歴任。2002年東京大学大学院薬学系研究科「ファーマコビジネスイノベーション講座」教員となり、04年産学連携本部教授・事業化推進部長に就任。04~13年、東京大学エッジキャピタル監査役。2020年4月より現職。

アントレプレナー道場から始めて起業家教育プログラムが進化

――東大で起業家を育成する「アントレプレナー道場」の生みの親ですね。

元々はボストンコンサルティングなどで経営戦略コンサルタントをしており、東大に来る直前はヘッドハンターでした。2002年から東大大学院薬学系研究科の寄付講座の教員をしていたのですが、04年にできた産学連携本部の教授公募に応募して、ベンチャー支援と起業家教育を担当してきました。04年は国立大学が法人化され、各大学が産学連携本部や知財本部などを作っていった時期です。05年にアントレプレナー道場を作り、起業家教育プログラムを始めました。現在は文部科学省の次世代アントレプレナー育成事業EDGE-NEXTの東大の代表者も務めています。起業家教育はアントレプレナー道場からスタートしましたが、この十数年で進化して、今ではいくつものプログラムが動いています。

――具体的にはどんなプログラムがあるのですか。

この数年、私は駒場の1、2年生向けに授業を持っています。「アントレプレナーシップセミナー」は新入生向けのもので、今年、160人くらいが受講しています。昨年からは2泊3日でグループワークを行い、社会課題解決の処方箋を練り上げる「東大アントレプレナーシップ・サマーブートキャンプ」があります。

アントレプレナー道場には今年、約700人が参加しています。1期生は265人でしたから、随分増えました。ライブドア事件の影響なのでしょうか、2年目は減ったのですが、3年目からは基本的に毎年増える傾向にあります。昨年からインドのスタートアップ企業のインターンシップも始めました。

道場には、1期生で元ミクシィ社長の朝倉祐介さんや、ミドリムシを原料にするユーグレナ社長の出雲充さんをはじめ、多くの東大卒起業家が講師として来てくれています。「ベンチャー・エコシステム」と呼んでいますが、受講生たちが大学卒業後に講師やメンターを務めたり、事業を大きくするために寄付してくれたり、人がつながりながら回っていく仕組みを作るのが、私の仕事です。

ベンチャー・エコシステム構築に向けて、ベンチャーキャピタルを設立したり、東大内にインキュベーション施設を作ったりもしてきました。

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