コロナ時代の「留学」

渡航中止にめげない オンラインに活路を見つけた「トビタテ」12期生たち

2020.10.09

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上野 創
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国と民間が取り組む留学支援プログラム「トビタテ!留学JAPAN」に選ばれたものの、新型コロナウイルスの影響で海外へ向かう前に足止めとなった学生たち。コロナ禍で国内ですら自由に動けない逆境にめげず、オンラインで人とつながりながら未来を切り開こうとしている3人の姿を紹介します。(写真は、新型コロナの感染拡大後、「トビタテ」学生が始めた二つの活動のWebサイト)

「トビタテ!留学JAPAN」とは?

文部科学省と民間が協働し、2014年から続く留学促進キャンペーン。主な取り組みである「日本代表プログラム」は民間企業などから募った寄付金で、高校生や大学生などの留学費用を手厚く支援する。選考では英語力や学業の成績を問わない代わりに、若者が自分で考えた留学計画をプレゼンする。合否は、「情熱」「好奇心」「独自性」を重視して決めるという。これまで248社・団体から計118億3千万円の寄付を集め、約7800人の若者が海外へ飛び立ったが、今春以降に渡航するはずだった12期生はほぼ全員が計画の延期や中止を余儀なくされた。

午前6時から「朝活」で交流 神田外語大・山田真平さん

山田真平さん
山田真平さん

千葉市に住む神田外語大4年の山田真平さん(22)は、6月にオランダへ渡航し、3カ月間、現地で採り入れられている子どもたちへの教育法「イエナプラン」を学ぶはずだった。この教育法では、子どもたちの個別性と自発性を尊重する。子どもはそれぞれ、自分の課題を認識して自主的に学ぶ。異年齢での協働を取り入れているのも特徴だ。

山田さんは、「トビタテ」プロジェクトの12期に応募して選考をパスしたが、新型コロナの感染拡大で3月初旬には暗雲が刻々と広がっていった。

そんななか、3月14日から「朝活」と名付けた集まりを始めた。毎朝6時から約1時間半、テレビ会議システムのZoomを使い、自分と同じように海外へ行けなくなった12期生たちと率直にやりとりする早朝の活動だ。

きっかけは、「トビタテ」の事務局が企画してくれた同期生たちのオンラインでの交流会。他の人の留学計画を聞くうちに、「知らない者同士、慣れないZoomでの発言だから堅い雰囲気だけど、この人たちはもっともっと面白いことを考えているはず。留学のことだけでなく、その人の関心や根底にある考え、経験をフランクに聞いたりしゃべったりしたい」と感じるようになった。

思いが高じて、「面白い人と出会いたいので朝活やります!」と宣言した。

開始を朝6時にしたのは、「そんな時間にわざわざ回線をつないで参加するならユニークな人に違いない」という思いつきから。初期の参加者はわずか1人か2人。10回目ぐらいから人が集まり始め、平均20人ほどになった。このころは、山田さんが疑問に思っていること、新しい発見、興味がわいた論文紹介などについて、ひたすらしゃべったという。

土日も開催して3週間ほどたったころ、「山田真平がリーダーの会」という色を変えようと、希望者が日替わりで「ホスト」になれるようにした。その結果、毎朝、多彩な発信が生まれた。90分間、ずっと手話を使って語りかける人、SDGsについて考えを発表する人、毎朝の日課である「パンをこねて焼く過程」をカメラで写し続ける人……。

女性がメイクなどを気にせずに参加できるように「顔を映し出さなくてもOK」としたり、各自の予定に合わせて途中の出入り自由というルールにしたり、集まりやすくなるよう工夫した。ただ、朝6時開始は変えなかった。Facebookでその日の内容を簡潔に発信し、翌日の内容の予告も書くようにしたところ、参加してくれる人が増えた。

一緒に「朝活」を続ける古川実季さん(左)と
一緒に「朝活」を続ける古川実季さん(左)と

その後は、大学のオンライン授業やアルバイトなどで忙しくなる人が出てきたため、「毎朝開催」ではなく、不定期で開いている。平均すると週3回ほど。また、「朝活」以外にも「こんな企画をやってみたい」「意見を聞かせて」「手伝ってほしい」といったやりとりが日々、生まれているという。

トビタテの支援による留学を断念した人も加わり、全国に散った12期生が近況を報告する「NOW会」は、夜の時間帯に隔月で開催している。また、「若者にもっと情熱を」というテーマのウェブマガジンで12期生のインタビューも含め配信している人もいる。山田さんも、朝活に参加していないトビタテ生をFacebookで紹介する「こんなトビタテ生見つけちゃいました」という新コンテンツを作った。

「トビタテに応募したのは、留学を支援してほしいという気持ちからですが、同じぐらい、いろんな面白い人とつながることに重きを置いていました。全国の同世代と知り合えて、目的の一部は果たせました。不謹慎かもしれないけれど、コロナは自分にとってネガティブなことばかりではなかった」と山田さんは話す。

朝活のつながりから、ライターとしての仕事や動画編集の依頼が来るなど、山田さんの世界は広がりを見せている。大学は休学予定だったが、留学がなくなったので、多くの単位を取得することに決め、オンライン授業の受講で忙しくなった。

将来の目標は、「学校でも家でもない、心のよりどころになる場所を子どもたちのために作ること」。

感染が収まったら、いずれオランダへは行くつもりだ。昨年、現地への旅でイエナプランの実践を初めて見て、自分なりにいつか日本でも採り入れたいと思ったが、帰国後に確認したいことが出てきたという。

「高校2年ぐらいから、自分とは何者? 何がやりたいの? と探し続けてきた僕にとって、一人ひとりの興味を尊重し、自分は何者かを考えさせるイエナプランは理想の教育に近い。オランダでの様子をもう1度見るとともに、その教育を受けた子たちが卒業後にどうなっているかを確かめてくるつもりです」

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