『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

キラキラと輝く大人の姿が最良の教科書 生徒と先生が輝いていれば結果はついてくる

2020.10.19

author
桜木 建二
Main Image

前回は、異色の経歴と独創的な教育実践で注目を浴びる日野田直彦さんに、「自分を主語に語れる人間になってほしい」といった指導の柱について語ってもらった。その手腕が買われ、2018年4月から校長をつとめる武蔵野大学中学校・高等学校(就任時は武蔵野女子学院中学校・高等学校)でも、学校改革はトップダウンで進めるのではなく、あくまで生徒や先生のやりたいことを吸い上げるボトムアップの手法にこだわっているという。日々、生徒とどのように向き合っているのだろうか。

校則の変更、部活の新設……全て生徒の発案で実施

日野田さんのボトムアップ手法は、学校生活全般に及ぶ。

「本校は以前から、『校則が厳しい』と言われてきました。ただよく見てみると、さまざまな経緯があり、単に厳しいわけではなく、細かく書かれた部分が多い、と言えます。

これを『ブラック校則』と断罪して私の手でこれを変えたり緩めたりするのは簡単なのですが、トップダウンで押しつけるようなことは絶対にしません。

生徒たちが校則を変えたいと思うなら、チームをつくって話し合って、自分たちで決めなさいと伝えてあります。

何事も『いままでの経緯』や『コンサバとリベラルの存在』があり、一方を立てれば一方が立ちません。そこでていねいに議論を重ね、時間をかけながら多くの人たちが『7割満足3割不満』まで持っていくことが大切です、とも伝えています。

それで実際にチームを立ち上げて、話し合っている生徒たちがいるのですが、意見調整がなかなかつかないのは当然で、ずっと話し合いを続けています。

でも、それでいいのです。自分たちの校則を獲得しようとして、話し合ってもめた経験というのは、大人になってからきっと役に立ちますからね。

さらに言えば、話し合って結論を出す過程で、多数決は禁止とも言い渡してあります。少数派を押しのけるようなことをしたら、それは人権侵害だよと、ことあるごとに伝えています。

部活動も同じです。何か新しくつくりたい部があったら、提案しに来てくださいと言っています。

このあいだ実際に、ある部を新設したいという生徒たちが僕のもとへやってきました。説得力のある計画かどうかをきちんと見なければいけないので、プレゼンをしてもらいました。内容が少し甘かったので、『これじゃ通せない』と、やり直しさせることにしました。

エビデンスをきちんとそろえて、立ち上げにかかる予算や運営費の見積もりも取らせています。改めて、生徒たちは僕のもとに乗り込んでくるはずですが、そのときにどれくらい計画をブラッシュアップできているか、楽しみですね」

(C)三田紀房/コルク「ドラゴン桜2
(C)三田紀房/コルク「ドラゴン桜2

トライ&エラーが学びを促進させてくれる

何事も自分たちで主体的に決めて、実行すればいい。ただしだれをもきちんと説得できるほどの論理と計画性を備えた企画であれば、ということだな。

手加減なしで子どもたちのプレゼンを見極めるとは、なかなか手厳しい気もするが……。

「いえいえ、そこはシビアにみていかないと。子どもたちだって近い将来、いま大人が築いているリアルな社会へ入っていくわけです。そこで通用しない方法ばかりを教え込まれ、机上の空論のもとでいくら鍛えられたってしかたありません。

それよりも実社会でそのまま通じる能力を最初から身につけて、高いレベルでガンガン試していくべきです。そうすると、最初はうまくいかないことが多いのは間違いない。失敗を山ほどすることになるでしょう。

でも、うちの学校では失敗こそ奨励しています。たくさん失敗しよう、それでこそ学びは促進されますよということは、繰り返し言っています」

代案を提示し、自ら動いて変革する姿こそ

踏むべき手続きを踏み、説得力ある発信をすれば、校則だって改められるし、新しい部活動だって立ち上げられる。

自分たちのことは自分たちで変えられるということを、武蔵野大学中高の生徒たちはじんわり肌で感じるようになるわけだ。

それだけ自主的に活動する習慣が身につけば、勉強だって自分で計画を立てて動機づけをして進められそうだし、学力以外の「生きていく力」のようなものを得られそうだ。

「そうです。実際、大人の世界だって同じです。現状にただブツブツ文句を言っているだけでは何も変わりませんが、不満なところがあれば代案を立てて提示して、周りとコミュニケーションをとりながらみずから動けば、どんなことだって変えていける。

そういうすてきな仕事をしていて、キラキラと輝いている大人は世の中にたくさんいるものでしょう? それを子どもたちにも知ってほしいですね。

ドラゴン桜本文(10月19日分)

何より必要なのは、子どもたちの身近にいる親や先生たちが、キラキラした大人になってその姿を見せること。それが本来、最良の教育になるはずなのです。

あこがれの対象や確固たる自分の未来像を描けて、そのために必要な手順やスキルを身につける気になった子どもは、学業成績が伸びるのはもちろんのこと、世界のどこでも生きていけるような力をつけていくことができます。

僕の前任の箕面高校でも、いまの武蔵野大学中高でも、海外トップ大学の合格者が出ているのは、そこがポイントです。

海外トップ大学の入学試験では、少なくとも日本式のペーパーテストの得点なんてほとんど何の意味も持ちません」

新着記事