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経営・文化・テクノロジー…食に学際的アプローチ 立命館大学 食マネジメント学部

2020.10.28

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西島 博之
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安心・安全に対する意識の高まり、食料自給率の向上、食料危機への対応――。食をめぐるさまざまな課題の解決には、既存の学問を組み合わせた新しい学問領域の確立が必要になる。2018年4月に開設された立命館大の新学部は、食を総合的に研究する日本初の学部だ。

大学での食に関する教育や研究というと、これまで、農学系の生産面からのアプローチ、家政学系の衣食住における生活者の観点からのものが中心だった。これに対し、びわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市)に開設された食マネジメント学部は、経済学や経営学を基盤に、生物学、化学、認知科学といった理系の幅広い学問の知見も生かし、食に関する総合的な学びをめざす。朝倉敏夫学部長がこう話す。

「食の問題を解決するためには複数の学問分野の知見を組み合わせる必要があります。さらに、食に関する産業は生産から消費にいたるまで裾野は幅広く、今後の成長も有望視されている。そのなかで、食を総合的にマネジメントできる人材の育成が求められているのです」

三つの観点から食を学ぶ

学部では三つの観点から食を総合的に学んでいく。食の供給や消費の仕組みと政策に関するマネジメント、食を文化的・歴史的な視点から学ぶカルチャー、人間の認知の仕方や栄養学の側面からアプローチするテクノロジーだ。managementは一般的に「経営」や「管理」と訳されるが、動詞のmanageには「困ったときになんとかする」といった意味がある。

問題が起きたとき、どうすれば、それを解決できるか。学生にはそういった力を養ってほしいと考えています」(朝倉学部長)

そのためには、文献やフィールドワークによってデータを集め、統計学的に分析・解析し、その結果を相手に伝えるコミュニケーションの力が不可欠となる。学ぶ領域が広い分、必修科目も多い。

「学生の負担も大きいと思いますが、食への好奇心に支えられ、問題を解決して社会の役に立ちたいという強い思いを持った人に本学部で学んでほしいですね」(同)

朝倉敏夫学部長
2021年4月、大学院食マネジメント研究科が開設される。朝倉敏夫学部長は「大学院を持つことの意義は大きく、食の研究でイノベーションを創出したい」と話す(撮影/写真部・高野楓菜)

海外の教育機関と連携する

その好奇心を養うため、力を入れているのが「現場を知る」こと。今年はコロナ禍で実施できなかったが、毎年6月には約320人の1年生全員が、1泊2日の日程で福井県小浜市で実習する。小浜市は食を地域振興の中心に据えた政策を展開しており、立命館大と連携協定を締結している。学生たちはプログラムを通じて市が進める「食のまちづくり」の実際を体験する。

海外の教育機関との連携も盛んだ。1895年、パリで創設され、食事・料理と文化の関係を考察するガストロノミーの国際的な教育機関ル・コルドン・ブルーと提携。ガストロノミーに関する知識の修得、キッチン・オペレーションや調理などの技術修得を行う共同プログラムを実施する。日本の大学でル・コルドン・ブルーと本格的に提携するのは立命館大が初めて。国内外の多様な食の世界が、学びのフィールドだ。

ル・コルドン・ブルーとの共同プログラムには1学年16人が参加している(写真提供/立命館大)
ル・コルドン・ブルーとの共同プログラムには1学年16人が参加している(写真提供/立命館大)

国際性豊かな学びができる

ル・コルドン・ブルーとの共同プログラムでは、学内の調理実習室を使った実習が行われる。ル・コルドン・ブルーの講師から実際のキッチン・オペレーションや調理の仕方などについて直接学ぶことができる。このプログラムは課外授業の扱いだが、食マネジメント学部が開講する12科目と、ル・コルドン・ブルーが開講する7科目(インターンシップを含む)を修了し、さらに学部の卒業要件を満たすことができれば、このプログラムの修了資格を得ることができる。

「この修了資格は、国際的な食の分野で通用する『パスポート』になります」(朝倉学部長)

さらに、2年生以降の学生を対象とした海外プログラムも実施。約2週間にわたって各国の食文化や食産業・食ビジネスを学ぶ。2019年度はイタリア、韓国、ベトナム、米国で行われた。たとえば、イタリアでは、スローフード協会が2004年に創設した、食科学を総合的に研究する食科学大学のコースに参加。チョコレートや生ハム、チーズなど北イタリアの食に関連した生産者や研究機関を訪問した。

2年生のときに海外の多様な食の世界に触れることで、自分の関心のある分野を見つけ、3年生以降の専門的な学びに生かすことができます」(同)

ふだんの授業を担当する教員も国際性豊かだ。朝倉学部長は韓国の食文化に詳しい。さらに、スローフード協会イタリア本部の日本人唯一のスタッフとして、スローフード・ジャパンの創立に尽力した石田雅芳教授、ヨーグルトなどブルガリアの乳加工文化などについて調査研究を行ってきたマリア・ヨトヴァ准教授らが名を連ねている。

2019年のイタリアでの海外プログラムでは、世界的に有名な料理人、マッシモ・ボットゥーラが運営する生活困窮者食堂を訪問した(写真提供/立命館大)
2019年のイタリアでの海外プログラムでは、世界的に有名な料理人、マッシモ・ボットゥーラが運営する生活困窮者食堂を訪問した(写真提供/立命館大)

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