発達凸凹の子の中学受験

心の成長を妨げないために… 決断した薬の投与 副作用も見極め上手に付き合う

2020.10.30

author
なないお
Main Image

この春、自閉症スペクトラムの息子が兵庫県の名門・灘中学校に合格したものの、地元の公立中高一貫校に進学したブロガーのなないおさん。発達凸凹の子どもたちの子育てについてつづります。
※医療監修:東京慈恵会医科大学・井上祐紀准教授(児童精神科医)

偏見や不安も 半年悩んで決断

発達障害の診断を受けると、程度や困難にもよりますが薬を勧められることがあります。発達障害がある子どもへの対応は、周りの理解と環境調節が第一となりますが、それだけでは追いつかない場合の一つの方法です。必ず薬が必要なわけではなく、その人の状態や環境により薬がなくても大丈夫な場合が多いと聞いています。

もちろん薬が必要かどうかの判断は医師がすることですが、向精神薬の投与については様々な偏見や不安も付きまといます。ましてや自分自身ではなく子どもに飲ませるのです。その決断は親がすることになります。

私も最初は随分と悩んだ上での決断でした。私と同じくお子さんへの投薬に悩む方は多いと思いますので、一つの事例として我が家の経験談をお話ししたいと思います。

娘はADHDと自閉症スペクトラムの診断を受けています。多動と衝動、不注意があり、4歳で診断された時には親子ともども疲弊しきった状態でした。そこを緩和するべく、最初にリスペリドンという抗精神病薬の投与を勧められました。興奮を抑え、刺激の受けやすさを和らげてくれる薬です。

診断がついてまだ間もない頃でしたので、私もほとんど知識がなく、子どもに飲ませてよいものかどうか、随分と悩みました。ネットで調べると依存症や怖い話がたくさん出てきます。10年以上前なので今のように発達障害に対して正確な医療情報がネット上に少なかった時代でした。主治医の先生は私の不安に一つひとつ答えてくれ、無理に勧めることもなく、時間をかけて現在でわかっていることを正確に教えてくれました。

なないおさんコラム⑧医者

もちろんお薬ですので、どんなものでも絶対安全はありません。胃薬だろうが痛み止めだろうが、場合によっては副作用、まれに重篤な副作用が起きる可能性もあります。主治医に何度も相談しながら半年くらい考えた末、娘に薬を飲ませることにしました。

最大の理由は娘の飛び出しです。衝動性の高い娘は道を歩いていても、車道側に気になるものがあれば(たとえば草花)、何も見ないでいきなりとんで行きます。頭で考えればそれが危険であることは知っています。車にひかれたらどうなるかも知っています。それでもその瞬間は気になるもののことで頭が埋め尽くされ、飛び出てしまうのです。

外を歩くときは常に手をつないでいたので引っ張り戻すことが出来ていましたが、一生そういうわけにもいきません。何度も何度も話して聞かせましたが、なかなか自分で抑えきれません。就学を控えて、これではいつか事故にあってしまう。下の子の幼稚園と時間が微妙にずれていることもあり、毎日の送り迎えが不可能でした。

薬によって衝動性や授業中の多動を抑えられれば、座っている苦痛も和らげられるかもしれない。そう思って投薬に踏み切りました。リスクもあるかもしれないけれど、娘の命には代えられません。そうして4歳から、娘の頭の中の刺激の受けやすさを静かにしてくれるリスペリドンと、6歳からADHD治療薬(メチルフェニデート塩酸塩徐放錠)を飲むことになりました。

発達障害は生まれつきの脳のタイプ、性質ですので、薬を飲んだからといって治るものではありません。痛み止めやアレルギーの薬のように、効いている間は症状を抑えるというものです。

薬で症状を抑えることによって、落ち着いて学習ができたり、過敏症状を軽減したりできます。繰り返す失敗で自信をなくしたり、叱られたりするシーンも減らせます。本人が少しでも楽に社会生活を営めるというメリットがあります。

もちろん障害によって起きる困難を全て無しにしてしまうような魔法の薬ではありません。最初は変化に驚くこともありますが、決して人格まで変えてしまうような薬でもありません。日常生活で少しでも本人の負担を軽減するために飲んでいます

心の成長を障害の困難によって妨げられないようにする、そういった感じでしょうか。ですので、ずっと継続して薬が必要なケースばかりでなく、成長の過程で一時的に薬でコンディションを調整する場合も多いそうです。多動に関しては小学校高学年くらいにおさまるお子さんもいると聞きました。実際に周りのお子さんを見ていてもそのようなタイプは多いと感じます。

うちの娘に関しては、多動は今のところおさまる兆候はなく、おそらく一生続くものかと思われます。よく考えれば、娘とそっくりな性質の父親は多弁多動で不注意だらけです。我が家の場合はどうみても娘と父親の特性が似ているので、この先も薬と付き合っていくことになるだろうと思っています。

続きを見る

新着記事