東大生と起業

第3回◆義足開発ベンチャーにP&Gを辞めて参画

2020.11.02

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中村 正史
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起業家イベントで義足のCEOと運命的に出会う

岩手県立盛岡一高から開発学に興味を持って文科Ⅲ類に入り、3年生から途上国における農業技術の研究をしたいと農学部に進学した。大学院では農学生命科学研究科の農学国際専攻で学んだ。技術が人々の生活を変えることに興味があった。学部4年次には、外国人観光客向けの情報を扱うインバウンドビジネスを行う会社を、文Ⅲの時の同級生とつくった。

修士課程修了後、ビジネスの基礎を学ぼうとP&Gに入社した。国内を担当した後、17年からシンガポールのアジア本社でAPAC(アジア太平洋)地域のサプライチェーンの中長期計画を策定していた。

孫小軍さんと運命的に出会ったのは、東京大学エッジキャピタル(東大のベンチャーキャピタルファンド)が投資先と学生・社会人を集めて開催した16年のイベントの場だった。

孫さんは9歳で右足を切断した後、経済的な理由で長い間、義足を利用できず、交換留学で日本に来て初めて義足をつけた。東大大学院修士課程で燃料電池を研究した後、ソニーに入社。3年間、エンジニアとして製品開発に携わった後、東大大学院博士課程に進学し、情報システム工学研究室でロボット工学を研究していた。

イベントをきっかけに孫さんからパワード義足の開発の話を聞いて、関口さんは強い興味を持った。

「P&Gで扱っている洗剤などの製品は技術的にも市場としても成熟しており、新しいことに挑戦したいと考えるようになりました。P&Gで身についたスキルを生かせる場所がないだろうかと考えていました。孫さんの事業にかける思いに共感し、21世紀になっているのに自分の足で自由に動くという生活の根本ができていないことに強い衝撃を受けました。こういうところに技術やスキルが生かされるべきだと思いました。会社を辞めることにあまり迷いはありませんでした」

幼い子どもがおり、大学の後輩で官僚をしている妻は心配はしたが、「やりたいことをするのがいい」と後押ししてくれた。

今後の目標について、関口さんはこう話す。

「義足はユーザーが限られ、信用や信頼が大事で、初期投資が大きいなど、ビジネスとしては難しい面があります。しかし、課題が明確で、それをものづくりの力で解決していくことに、やりがいを感じます。現在は義足に特化していますが、モビリティーという点では、筋力が衰えた高齢者や病気で足がまひした人など、足で苦労している人はとても多い。将来的にはすべての人の足の支えになる技術として使えるようにしたいです」

関口哲平COO(左)と孫小軍CEO
関口哲平COO(左)と孫小軍CEO

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