公立高の逆襲

難関国立大の合格者数が伸びた公立高ランキング 上位校の共通点は?

2020.11.06

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EduA編集部
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公立高校が各地で「復活」しています。東大、京大など難関10国立大の合格者数が10年間で伸びた公立高をランキングしたところ、トップは大阪府立北野、2位は神奈川県立横浜翠嵐(すいらん)と、伝統校が上位に名を連ねました。公立中高一貫校や、ユニークな取り組みをしている公立高も続いています。合格実績を伸ばしている高校にはどんな共通点があるのでしょうか。ランキングを作成した大学通信の安田賢治常務が解説します。

※グラフは、旧7帝大(東京・京都・北海道・東北・名古屋・大阪・九州)と一橋大、東京工業大、神戸大の合計合格者数が、2010年から20年までの10年間でどれだけ伸びたかでランキングした。ただし、卒業生が11年以降に出た中等教育学校などの新設校については、1期生が卒業した年からの増加数を用いた。重点校は、難関大進学を目指すため教育委員会が指定した「進学指導重点校」などで、名称は自治体により異なる。一貫校は、6年一貫の中等教育学校または併設型の中高一貫校。(貫)は一貫生の卒業生がまだ出ていない学校。SSH(スーパーサイエンスハイスクール)、SGH(スーパーグローバルハイスクール)は、10~20年度に文部科学省から指定を受けていた学校。卒業生数は20年の人数で、通信制、定時制を含む。

安田 賢治

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安田 賢治

大学通信常務取締役

現在、同社の出版編集とマスコミへの情報提供の責任者。小中高入試から、高校の大学合格実績、大学生の就職まで、情報提供や記事の執筆を行う。講演も多数。大正大学で講師を務める。著書に『中学受験のひみつ』(朝日出版社)、『笑うに笑えない大学の惨状』『教育費破産』(ともに祥伝社新書)がある。

東の日比谷、西の北野の共通点と相違点

ランキングに登場する公立高は、①難関大進学を目指す「重点校」、②1999年度以降に各地にできた公立中高一貫校、③もともと公立高が強いか私立高が少ない「公立王国」などで独自の取り組みをする注目校――の三つに大きく分けることができます。

一つ目の重点校の代表格が、都立日比谷です。石原慎太郎知事時代の2001年に都教育委員会が戸山、西、八王子東とともに4校を「進学指導重点校」に指定しました。その後、青山、国立(くにたち)、立川が追加され、現在7校が指定を受けています。東大、京大、一橋大、東京工業大、国公立大医学部医学科の現役合格者数が計15人以上といった選定基準があります。

なかでも日比谷は東大合格者数が多いのが特徴です。一方、京大などを含む難関10国立大で見ると、国立や西も負けていません。両校は日比谷に比べ進学先が多様化しており、ランキングでは日比谷より上位に食い込みました。

東京圏では早稲田、慶応義塾など難関私立大に進む生徒も多い一方、近畿圏では京大、大阪大、神戸大と難関10国立大のうち三つの総合大学が通学圏内に存在するため、ランキングでは近畿圏の高校がやや有利だったかもしれません。その西の代表格が大阪府立北野です。日比谷など都立高より10年近く遅れて、橋下徹知事時代の2011年度から「グローバルリーダーズハイスクール(GLHS)」になりました。都立の進学指導重点校が普通科のままなのに比べ、GLHSはさらに専門学科を設けて学区外から優秀な生徒を集め、のちに普通科を廃止して、その傾向を強めました。北野、天王寺、豊中などが急速に合格者数を伸ばしており、ランキング上位5校のうち3校を大阪府立高校が占めました。

こうした重点校を指定している都道府県の多くが、学区を廃止または統合しています。そのため、地域の優秀な生徒が重点校に集まり、合格実績の向上に拍車をかけています。今後は、重点校の中での浮き沈みが進むのではないかとみています。

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