東大生と起業

第7回◆コンサル会社を経て起業 「日本の産業の変化は遅すぎる」

2020.11.10

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中村 正史
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中央官庁や大企業にキャリアを託してきた東大生の志向が変わってきています。起業したり、ベンチャー企業に入ったりすることが、一つの選択肢になっています。東大の起業家教育やベンチャー支援を担ってきた各務茂夫・大学院工学系研究科教授(産学協創推進本部副本部長)は「優秀な学生ほど自分の運命をどこかに託すのは最もリスクが高いと感じている」と言います(記事はこちら)。東大卒の起業家たちを取材すると、日本の変化が見えてきます。(写真は、キャディの加藤勇志郎CEO)

100年以上イノベーションが起きていない製造業変えたい

日本の製造業の構造的な課題の解決を目指すキャディの加藤勇志郎・代表取締役CEO(29)は、東大経済学部を卒業し、マッキンゼーに3年勤めた後、2017年11月に同社を設立した。

「市場が大きくて、深い課題があり、かつグローバルな領域で起業したいと考えていました。日本の製造業は全盛期の頃につくられた大量生産向けの下請け構造が続いています。コストを下げるには下請けを買いたたくしか手立てがない閉塞感があり、町工場はこの30年で半分以上がつぶれています。これは日本の産業全体の大きな問題だと思いました。一方で、日本の製造業はグローバルでは強いし、ブランド力を生かせます。マッキンゼーでは製造業の工場に常駐しながらサポートしていたので、熱い人たちが多いことも知っており、やりがいがあると思いました」

同社の受発注プラットフォーム「CADDi」は、発注者が作りたい部品の図面データをアップロードし、材質や個数、納期を入力すると、独自に開発したシステムにより、データを解析して自動的に製造原価を計算し、品質、価格、納期が最も適合する加工会社とのマッチングが可能になる。加工会社が製作した部品は、キャディに納入し、キャディが検品・梱包して発注者に渡す。キャディが間に入ることで、発注者と受注者の取引コストと製造コストを下げることができる。

同社によると、日本の製造業は総生産額が180兆円規模の市場だが、120兆円は部品調達にかかるコストが占める。例えば電車1両には約3万点の部品があり、扉や窓枠、ライトなど多量の金属加工品が使われているが、多品種少量生産のため、部品1点1点の調達を最適化してコストを下げるのが難しい。一方、サプライヤー側の加工会社は零細の町工場が多く、得意分野もバラバラで、特定の1社に依存した下請け構造になっていることが多い。発注側が新規サプライヤーを開拓するには、取引先を探して条件を交渉し、注文通りに履行されるか監督する取引コストがかかるため、業界の構造が変わらない。

同社は「大きな市場だが、100年以上イノベーションが起きていない」と業界の構造改革に挑戦しようとしている。現在、機械装置メーカー約1600社と取引実績があり、累積では約5000社にのぼる。

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