東大生と起業

第7回◆コンサル会社を経て起業 「日本の産業の変化は遅すぎる」

2020.11.10

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中村 正史
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アントレプレナー道場で芽生えた思いが9年後に結実

今年4月から産学協創推進本部のスタートアップエキスパートとして学内の起業支援を担当している伊藤陽介さん(37)は、東大発の半導体関連スタートアップ、パイクリスタルの代表取締役を務めた。

静岡県立浜松北高校から東大工学部機械情報工学科、大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻に進み、アントレプレナー道場2期生の最優秀賞を受賞した。修士課程修了後、外資系コンサルティング会社のローランド・ベルガーに4年勤め、ジャパンディスプレイ設立時に同社に転職した。3年余り勤めた後、退職して、マサチューセッツ工科大学に留学し、MBA(経営学修士)を取得した。

パイクリスタル社は、東大新領域創成科学研究科の竹谷純一教授の研究成果である有機半導体単結晶技術をベースにしたスタートアップ。東大柏キャンパス近くのインキュベーション施設で開発を行っていた。知人を通じて同社を知り、2017年7月に代表取締役になった。会社を成長させて、今年1月に大手化学メーカーのダイセルからの買収を受けた。

「エンジニアになろうと思って大学に入りましたが、アントレプレナー道場などを通して、エンジニアになる以外にも、尖った技術が世の中に使われるようになるために貢献する道があることを知りました。アントレプレナー道場の最優秀賞をいただいた事業を自分でやってみたいとも思いましたが、いきなり起業する自信がありませんでした。自分で事業をやってみたいと思っていたタイミングでパイクリスタルとの出会いがあり、一つの成果を出すことができました。現在は大学での起業支援を通して、自分の経験を還元するべく活動しています」

学生向けの起業家プログラムを手伝ったり、起業に向けての相談を受けたりしているが、起業の環境も東大生の意識も随分変わったと感じている。

「アントレプレナー道場ができて、この15年で起業家教育を受けた東大生がたくさんいます。以前はアントレプレナー教育自体が東大には存在しませんでした。起業の成功例がどんどん出てきて、自分たちもできるのではないかと思う人が増えてきました。大学教員の間でも、そういう道があることが認知されてきたと思います」

伊藤陽介さん。現在は東大生の起業支援を手伝っている
伊藤陽介さん。現在は東大生の起業支援を手伝っている

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