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VRを活用した学習、英会話で実証実験 見えてきた効果と課題 「知識の実践」のカギとなるか

2020.11.13

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夏野 かおる
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2020年2月、NTTコミュニケーションズは同志社中学校の協力のもと、VR(仮想現実)を活用した英会話学習の実証実験を開始。実験リポートによると、VR学習は従来の学習(英語のテキストと音声を用いた学習)に比べ、生徒の習熟度が高くなるとされています。今回はVRを活用した学習の未来について、本実証実験の担当者であるNTTコミュニケーションズの荒木孝之さんに伺います。

荒木孝之さん

話を聞いた人

荒木孝之さん

NTTコミュニケーションズ アプリケーションサービス部

(あらき・たかゆき) NTTコミュニケーションズ株式会社・プラットフォームサービス本部・アプリケーションサービス部所属。2005年NTTデータ入社後、xR技術の可能性に魅せられ2018年にNTTコミュニケーションズに転籍。現在は「仮想現実」をテーマに新規事業の企画&開発をおこなっている。

5項目中、4項目でスコア向上

――2020年2月、同志社中学校で行ったVRを活用した実証実験の内容を教えていただけますか。

同志社中学校では、2・3年生を対象とした英語圏のさまざまな都市への短期留学プログラムを実施しています。我々はこの準備の一環となるよう、留学中に必要となる「入国審査」「レストランでの注文」の2シーンをVRコンテンツ化して提供し、英会話の学習効果を測定しました。

VRコンテンツの中身は、生徒にVR機器(ヘッドセット)を装着してもらい、アバター(3Dキャラクター)と英語で会話してもらうというものです。

「入国審査」を例に説明しましょう。生徒の見るVR空間には入国審査のカウンターが設けられています。カウンター内には入国審査官のアバターが立っており、「What’s the purpose of your visit?(入国の目的は?)」などと話しかけてきます。生徒はアバターのセリフを聞き取り、「To study.(留学のためです)」のように回答して、一連の会話を練習します。

「入国審査」のVR画面。生徒はポインターを使って操作することができる
「入国審査」のVR画面。生徒はポインターを使って操作することができる

アバターの隣には吹き出しが表示されており、字幕なし/英文/和文を生徒側で切り替えることができます。どうしても英語が聞き取れない場合は、英文や和文を参照できるというわけです。加えて、「再生」ボタンを押せば何度でもセリフを聞き直せるので、英語が苦手な生徒でも不安がなくなるまで何度でも練習できます。

英会話だけでなく、手続きの流れを擬似体験できるようにも工夫しています。たとえば、カウンターの上にあるパスポートを適切なタイミングで相手に渡したり、指紋登録の機械に手をかざしたり、顔写真を撮ったり……。生徒が留学した際、戸惑うことのないようにと設計しました。

――周囲のガヤ(騒音)まで入っていて、非常にリアルですね。学習効果はどのように測定されたのでしょうか。

実験では生徒を2グループに分けました。片方のグループは従来の学習方法(テキスト+音声)で学び、もう片方のグループはVR教材で英会話を学びます。

生徒によってもともとの英語能力に差がある可能性を考慮し、二つのグループはコンテンツごとに入れ替えました。「入国審査」をVRで学んだのであれば、「レストラン」は従来の方法で学ぶ、ということです。

こうして学習した成績は、ネイティブスピーカーとのロールプレイング(実技)をもとに採点されました。採点したのは英語教員とネイティブスピーカーのALT(外国語指導助手)で、評価項目は以下の五つです。

レスポンス……適切な「間」で返答できているか
発音……ネイティブに近い発音ができているか
正確性……文法に誤りはないか
理解度……相手のセリフを聞き取り、適切な返答をしているか
オリジナリティー……学んだ内容をもとに、返答する内容をアレンジできるか

採点されたスコアを比較した結果、VR学習を行ったグループは「レスポンス」「発音」「正確性」「理解度」の4項目でスコアの向上が見られました。

ネイティブスピーカーのALTによるロールプレイングの様子
ネイティブスピーカーのALTによるロールプレイングの様子

また、学習内容が定着しているか確かめるため、1週間後にまったく同じロールプレイングを行いました。その結果、VRで学習した内容のほうがより定着する(スコアが低下せず、学習直後の状態を維持している)というデータも出てきました。

定性的な観点からもVR学習はおおむね好評価で、生徒の約74%が「VR学習には効果がある」と回答しました。「本当に外国の方と話しているようで、ロールプレイングでネイティブの方と話す際も緊張しなかった」「英語以外の教科でも取り入れてほしい」などの感想をいただいています。

VR教材自体の物珍しさもあるでしょうが、子ども達の興味・関心を引き出し、より効果的な学習が行えたのではないかと考えています。

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